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クートンブログ

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ネパール大地震で起きた世界遺産の倒壊がどれだけの惨事か日本に置き換えて考えてみた

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2015年4月25日にネパールで発生した地震では、ユネスコに登録された複数の世界遺産が壊滅的な被害を受けました。

一方で、元々ネパールと馴染みが薄い日本人の私たちが「ネパールの世界遺産が被害を受けた」と聞いても、あまりピンとこない部分が多々あります。

今回は「ネパール大地震が与えた歴史的建造物に対する被害の深刻さ」に関して、日本の世界遺産や歴史的建造物を引き合いに出して考えてみたいと思います。

カトマンズの渓谷

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"Basantapurpalace" by Artha at English Wikipedia - Transferred from en.wikipedia to Commons by Jalo.. Licensed under CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons.

ユネスコの世界遺産に登録されている「カトマンズの渓谷」とは、首都のカトマンズ周辺にある盆地のこと。
3つの主要都市(カトマンズ市、ラリトプル市《パタン》、バクタプル市)にある王宮や寺院も同様に世界遺産に登録されています。

12~18世紀に建立された寺院や像が数多くあるカトマンズの渓谷ですが、この地が大きな被害を受けました。

近年、建造物の老朽化、急激な都市化、環境問題の深刻化を理由として、ユネスコが「危機遺産」に認定していましたが、実際に今回の地震で歴史的な価値を大きく残ってしまいました。

同時期に建立された日本国内の文化遺産と合わせて見てみると、その古さや遺産的な価値が良く分かると思います。

  • 法隆寺地域の仏教建造物……7世紀~18世紀
  • 姫路城……14世紀
  • 古都京都の文化財……8世紀~17世紀
  • 厳島神社……6世紀
  • 古都奈良の文化財……8世紀
  • 日光の社寺……8世紀(日光二荒山神社と輪王寺)、17世紀(日光東照宮)
  • 平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群―……12世紀

ダルバール広場

ダルバール広場=王宮広場のことで、カトマンズ、パタン、バクタプルの各都市にあります。

広場の周囲にはチベット仏教の寺院が多く集まっており、今回の地震で3都市のダルバール広場の5~8割の建造物が倒壊しており、最も深刻な被害が出たのがカトマンズのダルバール広場でした。

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"KATHMANDU NEPAL FEB 2013 (8581665041)" by calflier001 - KATHMANDU NEPAL FEB 2013
Uploaded by russavia. Licensed under CC 表示-継承 2.0 via ウィキメディア・コモンズ.

カトマンズ市内のダルバール広場にあるダラハラ塔は、ネパールの首相ビムセン・タパが建てた円柱型の白い塔です。

カトマンズでは最も高い建築物でしたが、今回の地震で土台部分を残して倒壊しています。

イスラム寺院の尖塔とも似た、ムガル帝国(トルコ系イスラーム王朝)とヨーロッパ形式のデザインで、61.88mの9階建て。

内部は213段の螺旋階段になっており、8階部分の円形バルコニーから市内やカトマンズ峡谷を一望できる名所として観光客からの人気も高い有名建築物でした。元々は軍事利用の為に作られた監視塔で、国の重大な事件が発生した際、最上階から軍事ラッパが吹かれました。

1824年に第一塔、1832年に第二塔が建設されており、今回倒壊したのは「第二の塔」です。

1834年に起きた地震で、第一塔は特に深刻な被害を受け、100年後のビハール・ネパール地震(1934年)の際に完全に倒壊しました。

唯一残った第二塔は復元修理の為、長期間立ち入り禁止になっていましたが、2005年から一般公開が開始されました。

今回調べて分かったことですが、ダラハラ塔にとっては倒壊自体は始めての経験では無いようですね。
(三度も倒壊している塔であれば、もう少し耐震をしっかりさせるべきだとも思うのですが……)。

さて、ダラハラ塔が建造された1832年は、日本で言うと江戸時代後期にあたります。
日本だと有名建築物と同年代なのか調べてみました。

【祇園橋】

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熊本県天草市の町山口川に架かる、日本最大級で全国的にも珍しい多脚式の石橋が「祇園橋」です。

天保3年(1832年)に建造、国の指定重要文化財に指定されています。

ちなみに町山口川は寛永14年(1637年)に、島原・天草の乱の激戦地となり、橋の南詰の東側には石碑があります。

【諏訪大社(長野県諏訪市)】

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"諏訪大社本宮拝殿". Licensed under GFDL via Wikipedia.

長野県の諏訪湖周辺4ヶ所にある古社です。

本宮の現社殿は天保6年(1835年)、拝殿は安政3年(1857年)に建てられており、社殿6棟が国の重要文化財に指定されています。

創建の年代自体は不明ですが「日本最古の神社の一つ」で、最近だと東方Project「東方風神録」のモチーフとなった神社として知られており、軍神、狩猟、漁業、農業の神として信仰されています。

スワヤンブナート

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"Swayambhunath temple" by Avista7 - Own work. Licensed under CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons.

カトマンズの中心部から西に2~3km離れた所にあるネパール最古の仏教寺院「スワヤンブナート」。

別名「モンキーテンプル」として、猿(信仰の対象の一つ)が多い寺院としても知られています。

今回の地震でメインの仏塔(黄金の仏塔、五色のタルチョが掲げられているもの)の隣にあった白い仏塔の上部分が大きく倒壊、レンガ造りの建物も崩壊した為、現在は立ち入り禁止になっています。

スワヤンブナートは5世紀の始め(諸説あり)に建立。2010年に大規模な改修工事が終わったばかりでした。

【法隆寺】

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世界・日本最古の木造建築である法隆寺の金堂、五重塔は607年に建築、670年に焼失後に再建。

【飛鳥寺】

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日本最古の本格的仏教寺院「飛鳥寺」は、世紀末ごろの建築。

これらの建造物よりも100年前近く前に作られた仏教寺院が倒壊した訳です。

完全な修復は不可能?観光に大きなダメージ

今回の地震で倒壊したのは、元々耐震性が低いレンガや木で作られた古い建築物が多く、専門家の意見では「歴史的な遺跡が完全に再建される可能性は低い」と見ています。修復するにしても、約5~10年はかかると見られています。

ネパールのサービス産業は観光業を含めてGDP(国内総生産)の5割を占めており「観光で経済が成り立っている国」と言っても過言ではありません。

今回は世界遺産の被害がどれだけ大きいことなのか、分かりやすいように日本と比較してみましたが

  • 世界遺産が経済や経済に与える影響の大きさ
  • ネパールの人々の宗教に対する信心深さ
  • 首都に与えられたダメージの深さ

も合わせて考えてみると、本当に深刻な事態であると言えます。
現段階では文化財の再建や支援額に関しての具体的な取り組みについての情報は出ていません。今後の続報を待ちたいと思います。

(書いた人:昼時かをる)

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