熱中症予防の観点から、今夏、意識して水分を摂取した人も少なくないでしょう。水分を摂って、体内に吸収されるまでは約20分程度かかるといわれており、こまめに水分補給を行うことが大切。いざ、熱中症の症状が現れてからでは遅いといいます。
しかし、水分を意識してたくさん摂るといっても、味のないものをひたすら飲むのはなかなか苦しくもあり…。普段から水分をたくさん摂取する人ならまだしも、普段あまり水分を取らない人にとっては苦行でもあります。
また、あまり水分を取りすぎると水毒症になると聞いたこともあります。どんなものも、過ぎたるは毒。水も過剰摂取することによって、血液中のナトリウムが低下し、体のむくみや胃腸機能の低下、嘔吐、けいれんといった症状が出るというものです。
水分の適量って、いったいどのくらいなのでしょうか?
お金のように水分の収支に
摂取水分の適量を知るには、まず、1日に排出される水分量を把握することがヒントになりそう。環境省が発行した『熱中症環境保健マニュアル 2009』によると、成人男子が比較的安静にしていた場合、排出される水分量は、
- 尿・便 1.3リットル
- 呼吸や汗 1.2リットル
と、約2.5リットルと思ったよりも多めの印象! 「呼吸でも水分を排出?」と意外に思う人もいるかもしれませんが、寒い日に外で息を吐くと白くなった経験があるはず。あれは、呼気内の水分が冷やされたものであり、呼吸でも水分が排出されている証拠です。
しかしこの数字、比較的安静にしていた時のものだというから、暑い日や運動した日などはもっと水分を排出していることになります。
なので、実際には排出する分の水分を摂取して、体内の水収支をトントンにしておく必要があるというわけ。上の数値を見ると、毎日最低でも2.5リットルほど摂取する必要がある計算になりますが、実際には食事の食材の水分のほか、体内でも水分は生成されているため、そこまで水をがぶ飲みしなくてもよいそう。その目安は、前述環境省マニュアルによると、以下の通り。
- 水分摂取 1.2リットル
- 食事 1リットル
- 体内生成 0.3リットル
それでも、大体1リットル程度は摂取が必要なようです。
性別や年齢、肥満度合いでとるべき水分量は変わる
自分が摂取すべき水分量をより厳密にはかるためには、性別や年齢、肥満度合い、不感蒸泄量などを足し合わせ、1日の退社水分量を把握する必要があるそう。
つまり、式のイメージは…
水分摂取量+食事からの摂取量+体内生成量=(尿量+大便量+発汗量+不感蒸泄量)
そもそも年齢でも、水分量は大きく異なり、それぞれ体重に対して、以下の程度と言われています。
●世代別水分量
- 胎児:90%程度
- 新生児:75%程度
- 子ども:70%程度
- 成人男性:60%程度
- 成人女性:50%程度
- 老人:50%程度
成人の場合、男性よりも女性は脂肪量が多いため、その分水分量が少ないそう。筋肉や皮膚に含まれる水分量が70~80%に対し、脂肪に含まれる水分量は10~30%とかなり少ない割合。これが、女性の水分量が少ない理由です。
不感蒸泄量という言葉を初めて聞いた人も少なくないかもしれませんが、これは呼吸や毛穴から蒸散される水分のように、無意識に排出される水分量のこと。その相場は、以下の通り。
●不感蒸泄理量の相場
- 新生児・乳児 50~60ml/kg/日
- 幼児 40ml/kg/日
- 学童 30ml/kg/日
- 成人 20ml/kg/日
厳密な計算式は、
「15×体重(kg)+200x(体温(摂氏)-36.8)」
簡単な計算式なら、
成人の場合:「15mlx体重(kg)」
15歳以下:「(30-年齢)ml x 体重(kg)」
で求められるそうです。
また、不感蒸泄は、体温が1度上がることに15%増加し、気温が30度以上の場合は、気温が1度上昇ごとに15%増加するそう。
20%の水分を失うと死亡リスクも! 摂ろう水分!
私たちは、体内の水分量が減ってくるとのどの渇きを覚え、水分を摂ろうとします。減った水分量が2~4%程度であれば、水を飲むことで回復しますが、6%程度になると脱力感や頭痛などが起こり、水分を摂取しても吐き気によって吸収できないこともあるので注意! 10%不足で筋肉のけいれんや循環不全が、20%不足で、死に至る可能性もあります。水はすぐに吸収されるわけではないので、やはり、水分はこまめに摂ることが大切です。
(書いた人:考務店)