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長崎ハウステンボスのロボットホテル「変なホテル」は想像以上に近未来だった

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長崎県佐世保市にあるハウステンボスに2015年7月にオープンした変なホテルを知っていますか?

何が「変」って、世界初となる「ロボットがメインスタッフを務めるホテル」なのです。

見た目は「公共施設」っぽいけど……

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変なホテルは、外観も普通のホテルとは違います。

私の第一印象は「新設の公民館や道の駅っぽい」でした。

しかし実際に近くまで行ってみると、エントランスには動作拡大型スーツ「スケルトニクス®・プラクティス」が展示されていたり、入り口では巨大ちゅーりーちゃんが出迎えてくれたり、ホテルらしい受付があったりと「あぁ、やっぱり、これが有名な変なホテルか」と認識しました。

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▼スケルトニクスについては、こちらの動画で詳しく紹介されています。

荷物預かりはクロークロボットが担当

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チェックイン前、チェックアウト後などの荷物を預ける有料ロッカーを管理するのが産業用アーム型ロボット「クロークロボット」


備え付けのタッチパネルで名前と暗証番号を登録後、カウンターの「荷物搬入口」から荷物を入れると、ロボットアームがロッカーに収納してくれます。

ロッカーサイズは「機内持ち込み可能サイズの手荷物の約1個分」です。

料金は500円(24時間)。
荷物をホテルに預ける際は「無料」がほとんどなのですが、変なホテルは有料になっていますね……。

変なホテルとハウステンボスまでは、ちょっと距離があるので、荷物を預ける際は、ハウステンボス内のコインロッカー(300~500円)や、フェアウェルゲート(出国)の出口横に手荷物一時預かり(1個300円)を利用する方法もあります。

今回は長崎空港の近くでレンタカーを借りて、ハウステンボスまで行ったので、荷物はホテルに行くまでは車内に置きっぱなしにしていました。チェックイン時間も遅かったことから、ロボットアームが動く姿は見られず……。

フロントでロボットスタッフがお出迎え

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フロントの従業員も、もちろんロボット。チェックインやチェックアウト時にお世話になります。

訪れた時は、恐竜型ロボットの「未来(みらい)くん」と、美人ロボットの「夢子ちゃん」が対応してくれました。

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今回は日本語と英語を話せるバイリンガルの未来くんに担当してもらうことに。
(チェックイン、チェックアウト時も思いましたが、一番人気は未来くんでした。夢子ちゃんは、なんかちょっと怖いってのもあります)

フロントまで行くと、未来くんが身振り手振りを踏まえて「いらっしゃいませ。変なホテルへようこそ。チェックインのお客様は1(のボタン)を押して下さい」とチェックインの案内をしてくれます。

本日の宿泊者データと確認する為に名前をフルネームで言い、宿泊者カードに名前と電話番号を記入後、下のポストに入れます。

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その後、隣にあるタッチパネルへ移動して、確認手続きを行なうと、ルームカードが発行されます。これでチェックインは完了。

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本来であれば「いらっしゃいませ」からルームカードの発行まで人間のスタッフが行なうものなのですが、それが「全部ロボットでできる」のは改めて驚きでした。

ポーターロボットが部屋案内&荷物運び

チェックイン後、荷物を客室まで運んでくれるベルボーイ/ベルガールの代わりにポーターロボットが活躍。

部屋番号を入力して荷物を載せた後は、自動的に動くポーターロボットの真後ろに付いて歩いて行けば、宿泊する部屋の前まで案内してくれます。

歩く人に合わせて、移動速度を調節。
「人がロボットの進行方向にいる」や「人とポーターロボットの距離が(2m以上)離れる」という場合は、自動的に停止します。

基本的に客室案内係や自分で荷物を持って歩くよりも、安全性を考えてか、速度は「のろのろ、ゆっくり」なので「自分で荷物を持って歩いた方が速い」と思うことは間違いありません。でも面白い。

部屋の前に付いて、荷物を取り出した後は、行きと同じように自動的に元の場所まで帰ってくれます。

ちなみに他のホテルと同じく、荷物を持ってくれるのは「行き」だけ。
チャックアウト時にポーターロボットが来てくれることはなく、自力で荷物を運ぶ必要があります。

【ポーターロボットの使い方】

1.部屋番号の登録

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タッチパネル、ルームカードをかざす、日本語音声入力に対応。

2.荷台に荷物を載せる

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機内持ち込み手荷物であれば2つ分を一度に載せられます。
荷物を載せ終わった後はチェーンを忘れずに装着。外れたままだとポーターロボットは動かない安全仕様です。

3.ロボットが部屋まで案内。

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画面にはハウステンボスや変なホテルの案内が表示されます。音楽も流れます。

4.部屋前に到着

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「○号室に到着しました。荷物をお取り下さい」と表示されるので、チェーンを外して荷物を取り出します。

評価はもちろん「満足(Excellent)」!

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5.受付に帰るのを見守る

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評価をしたら、ポーターロボットは自動的に受付へと帰っていきます。一仕事終えた感ある後ろ姿も良い。


注意
ポーターロボットの利用可能時間は15~22時。
チェックインの時間があまり遅くならないようにしましょう。

使えるのはA棟だけ。スーペリアタイプ12室とデラックスタイプ12室があります。

今回泊まったのは1階だったので「2階にはどうやって運ぶのだろう?」と思っていたのですが、2階へはエントランス棟からスロープで行ける仕様になっていたので、問題なく使えそうですね。

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画像引用
www.h-n-h.jp

顔認証システムでカギ無しでも開けられる

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部屋のカギの施錠はルームカードの他に「顔認証」でも可能です。

チェックイン時に顔認証での入室の希望の有無を聞かれるので「はい」を選択。
顔登録は以前はタッチパネルで行なっていたようですが、混雑緩和の為か、現在は部屋前での登録になっています。

顔認証後はカメラを見て「SCAN」をタッチすればカギが開きます。
ルームカードは1枚だけなので「1人がルームカードを持参」「もう1人が顔認証を登録」というようにすれば、別行動時も便利そうですね。

客室はとにかくスタイリッシュ

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一般的なローコストホテルよりも広く、モデルルームやインテリアショップの一部屋を思わせるスタイリッシュな雰囲気に驚きます。

変なホテルの部屋は「スタンダードタイプ」「スーペリアタイプ」「デラックスタイプ」の3タイプ有り、一部屋あたり2~4人が宿泊できます。

今回泊まったのは、スタンダードタイプ。
全席禁煙室で、部屋がタバコ臭いことが一切なく、非喫煙者や子どもにとっても過ごしやすいです(喫煙スペースは外にあり)。

省エネ型空調設備

部屋をぐるっと見渡してみると「エアコンの吹き出し口」が見当たらないことに気付きます。

変なホテルでは最新の輻射パネルを使った冷暖房システムを搭載。
部屋の室温を一定に快適に保ちます。

冷温水の流れるパネルを利用して水の熱や冷気を電磁波で飛ばし、壁やソファなどに反射させることで室内全体を温めたり、冷やしたりする最新技術で、地球環境問題にも配慮している。

(引用:日経トレンディ2016年2月号「ハウステンボス発『変なホテル』の勝算」)

見た目以上にハイテクな技術を搭載しているようですね。
フロントでは加湿器も用意されていますが、利用しなくても「朝起きたらノドがガッサガサ」ということも無かったので、かなり優秀でした。

ちゅーりーちゃんに話しかけよう

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スタイリッシュな部屋に似合わないようにも思えるチューリップ型ロボット「ちゅーりーちゃん」は、室内照明のオンオフや天気、時刻などを案内してくれます。

応対してくれるのは「今何時」「今日の天気」「明日の天気」「明かりつけて」「明かり消して」「部屋の温度」「目覚まし時計」「モーニングコール」など、決められた言葉だけ。

あいさつも「ありがとう」「おはよう」「こんにちは」「かわいいね」「いってきます」であれば、返事をしてくれます。
声の感じは「ゆっくりしていってね!!」でお馴染みのSoftTalkに似ているように思いました。

何も話しかけていないのに「なんでしょうか?」と聞いてくる時もあり、途中から応対するのが面倒に思い始めたので、後ろにあるスイッチを「OFF」にしました(身も蓋もない……)。

※後日、説明書を読むと「おでこの左側のハートに手をかざすと、私はおしゃべりをやめます。」とあったので、それで対処すれば良かったなと。

正直、iPhoneのSiriちゃんと比較すると語彙力は圧倒的に乏しいので、より会話を楽しめるようにアップデートを繰り返してほしいなと思いました。

タブレット一つが何役も兼ねる

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部屋に置かれたタブレット(エプソン製)は、一台で「電話」「テレビ」「リモコン」「ネット利用」など、何役も役割を果たします。

  • フロントに連絡
  • TVを観る(Station TV)
  • 照明制御(人感センサーのOFF/ON)
  • 変なホテルの案内(インターネットへの接続)

ここにも変なホテルの「必要最低限の設備」が見て取れますね。

最低限のアメニティだけ

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変なホテルでローコストを感じた理由の一つには「アメニティの少なさ」もあります。

洗面所:フェイス&ハンドソープ&シェービング、歯ブラシ、歯磨き粉、折りたたみクシ
風呂場:リンスインシャンプー、ボディソープ

……は備え付けでありますが、他に必要な物があれば、持参するか、フロント横の自動販売機(スマートキオスク)で買うか、近くのお店で買うかする必要があります。

▼自動販売機(スマートキオスク)

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ハウステンボス内にはドラッグストア(ココカラファイン)、外にコンビニ(ファミリーマート、ヤマザキショップ)があるので「もっと良い物が欲しい」と思っても、買いに行けばいい話なので、そう困りはしないと思います。

【客室貸出品】
扇風機、空気清浄機付き加湿器、ベッドガード、アイロン・アイロン台、栓抜き・ワインオープナー、毛布、ラバーマット、シャワーチェアー、ベビーベッド

【有料貸出し品】
パジャマ(300円)

【販売品】
スリッパ:150円
女性用アメニティ スキンケアセット(リキッドクレンジング、洗顔、化粧水、乳液、コットン、綿棒、シュシュ):300円
男性用アメニティ カミソリ:100円、靴磨き10円
子供用アメニティ 歯ブラシ全長14cm、タオルハンカチ、スリッパ全長21cm:300円
コーヒーセット 各一人分(インスタントコーヒー、シュガー、クリーミングパウダー):50円
マルチ充電器:1,900円
貼るカイロ、貼らないカイロ:各100円
ボディタオル:150円
生理用品:300円
五島灘の入浴剤 塩丸 単品(オレンジ香、ユーカリ香、ゼラニウム香):各250円
五島灘の入浴剤 塩丸 6点セット(オレンジ香×2、ユーカリ香×2、ゼラニウム香×2):各1,250円
ハウステンボスロゴ入り傘:1,000円


客室には自由に使える冷蔵庫があり、飲食物の持ち込みもOKです。※食器やカラトリー類は無し。
オープン当初は冷蔵庫は無かったそうですが、宿泊者の要望に応えて全室に備え付けられています。

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開けるとハウステンボスオリジナルの水が2本入っていました。

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ルンバが床掃除

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実際に動いている姿は見られませんでしたが、床掃除はルンバが担当。

宿泊者だけの特別価格で販売もされていました(期間限定)。

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ちなみに連泊の場合、タオル等の交換(タオルやバスマット、アメニティセットの交換、ゴミ箱内のゴミを回収、)は毎日行なわれますが、ベッドメイクや室内清掃は無し。7泊以上の長期滞在の場合は、ベッドメイクや室内清掃は週1回の頻度で行われます。

「人間」の従業員がやることは?

「メインスタッフはロボット」が売りの変なホテルですが、もちろん人間の従業員も働いています。

私が実際に変なホテルで遭遇した「人間のスタッフ」は、以下のような作業に従事していました。

  • フロントスタッフ:トラブル処理や雑務
  • 送迎スタッフ:小型バスでの送り迎え
  • 清掃スタッフ:床以外の清掃、片付け、アメニティの取り換え
  • 朝食会場スタッフ:案内、料理の配膳、片付け、調理

ロボットでは対処できないことは、やはり人間が行なわざるを得ません。

変なホテルとハウステンボス間を小型バスで送迎しているスタッフさんに「自動運転では無いんですね」と言ったら「さすがに、そこまでは……」と返されました。

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まだ試作段階なので、現状は10人のスタッフが携わっているが、将来的にはロボットによる完全自動化が目標。とはいえ、緊急時を考えると5人は必要だろう。(引用:日経トレンディ2016年2月号「ハウステンボス発『変なホテル』の勝算」)

という話で、変なホテルから完全に人間のスタッフが居なくなる訳ではないので、急病などの非常時も安心ですね。

朝食会場は施設外

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朝食会場「健康レストランAURA(オーラ)」は、変なホテルの施設外、アドベンチャーパークにあります。

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医食同源の考えに基づく料理をブッフェスタイルで提供しています。
ハウステンボス外の施設なので入園チケットは持たなくても大丈夫です。

店内は白を基調とした明るくて清潔な雰囲気で、施設内の野菜工場「とれたてファーム」で栽培した、新鮮な無農薬野菜を味わえます。

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利用客は若者と外国人が中心

宿泊したのが3月上旬の平日というのもあり、変なホテルの宿泊者は、卒業旅行らしい10代後半~20代の若者や外国人が目立ちました。
祝日や長期休みの期間であれば、家族連れも多いだろうなという印象。

ハウステンボスのオフィシャルホテルには「ホテルヨーロッパ」「ホテルアムステルダム」「フォレストヴィラ」が有名ですが、こちらの宿泊者は(パーク内から見た感じ)中年以降のおじさん、おばさん率が高かったように思います。

「安い料金でハウステンボスのホテルに泊まりたい」「せっかく長崎に来たのだから、変わった体験をしてみたい」という人は、やはりローコスト&メインスタッフはロボットの変なホテルに人気が集まる感じですね。

チェックアウトもロボットが対応

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チェックアウトは、フロント横にあるタッチパネルの機械にルームカードを入れて、手続きをすれば完了。

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車でハウステンボスまで来た人は、フロント右側に設置している「駐車券の無料処理機」で、忘れずに処理を行ないましょう。

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その部屋の奥に人間のスタッフが駐在する部屋があるので、ロボットでは対処できない事が起きた場合は、ノックをすれば対応してくれます。

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「変わり続けることを約束するホテル」に今後も期待

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変なホテルは「わり続けることを約束する」というコンセプトから名付けられました。

施設の至る所に最新技術を導入した変なホテルの魅力は、ロボットだけではなく「ホテルは将来的にどうあるべきか?」も考えさせられました。

人口減少による従業員不足、外国人観光客の増加に伴う宿泊料金の値上げ、今後も増え続けるだろうローコストなホテルとの差別化など、変なホテルは将来の日本のホテル業界に一石を投じるようなホテルであることは間違いありません。

3月15日には、新しく木造タイプのホテル(第2期棟、72室)がグランドオープンします。
世界初となる水素エネルギー活用による電力供給システムを採用しており「地球にやさしいホテル」を目指しています。

遊び心いっぱいのテーマパーク性だけではなく「人に依存しないホテルのあり方」も考えさせられる変なホテルに今後も期待です。

(書いた人:昼時かをる)