世界ではまだまだ、現金払い、クレジットカード払いが主流ですが、日本では「電子マネー」という新しい支払い方法が普及してきました。
おサイフケータイのように、携帯電話を使ったり、専用の電子マネーカードを使って端末にタッチするだけで、瞬時に支払いが完了するのが、電子マネーのメリットです。
また、利用金額に応じてポイントが貯まると言った特典があるため、実質的には「現金と同じように使えるのに、現金払いよりお得」という状態になっています。最近では、使える場所も増えてきたので、財テク消費者は様々な電子マネーを上手に使い分け、活用しています。
電子マネーの勢力図を大きく分けると以下のようになります。
・交通系電子マネー
SuicaやPASMO、Icocaなど鉄道会社が発行しているもの
・小売系
WAONやnanaco、楽天Edyなど小売業者が発行しているもの
・携帯系
iDやau WALLETなど携帯キャリアが発行しているもの
上記の中でも、最近特に力を入れていると感じているのが「携帯キャリア」が発行している電子マネーです。携帯キャリアが発行している電子マネーは、キャンペーンを積極的に行っており、お得感も大きいです。
そこで今日は、携帯3社が展開している電子マネーの特徴と利用メリットについてまとめるとともに、次世代の電子マネーと関連付け、勝つ会社、負ける会社を考えてみました。
携帯キャリアが展開する3つの電子マネー
NTTドコモ、au、ソフトバンクの3社が提供している電子マネーのメリット・デメリットをまとめます。
iD(NTTドコモ)
「おサイフケータイ」のサービス名で、電子マネーをいち早く普及させたのが、NTTドコモのiD(アイディ)です。私もよく、iDを活用しています。
Android系のスマートフォンにはiDが利用できる端末もありますが、iPhoneでは「おサイフケータイ」を使えません。私はiPhoneを使っているので、iD一体型のクレジットカードを使っています。クレジットカードを端末にかざすだけで、すぐに支払いが完了します。
iDの一体型が使えるクレジットカードは、NTTドコモが発行している「dカード(旧DCMXカード)」や、iDを共同で運営している「三井住友カード」、そして「イオンカード」などです。
iDが他の電子マネーと大きく違う点は、「後払い方式(ポストペイド)」であることです。通常の電子マネーは前払方式のため、定期的なチャージ(またはオートチャージ)が必要ですが、iDの場合はクレジットカードと同じく後払い方式なので、電子マネー残高を気にせず使えます。
iD単体ではポイントプログラムは用意されていません。基本的に「iD支払い → 後日クレジットカード請求と一緒に支払い」という流れになるので、クレジットカードのポイントが得られるのみとなっています。よって、利用するクレジットカードのポイント還元率によって、iDのポイントの貯まり方も変わってきます。
ポイント還元において、iDはお得感が薄れます。また、他の電子マネーと比較した場合のデメリットとして、ネットで使えないというものがあります。iDでの支払いは便利ですが、あくまでもリアル店舗での利用に限定されてしまいます。
一方で、普及率については問題ありません。マクドナルドや主要なコンビニ、イオンのスーパーなど、多くの場所でiDによる支払いが行えます。また、購入額が1万円以内なら、どこに行ってもサインや暗証番号の入力は不要です。(1万円を超えると暗証番号の入力が必要)
au WALLET
auが展開する電子マネーサービス「au WALLET」は、専用のカードにチャージをして利用する電子マネーです。auが提携先に選んだのは世界的に3,800万店以上の加盟店を持つ「MasterCard」です。
ドコモのiDは独自に展開していますが、au WALLETはMasterCardと提携することにより、利用可能店舗を一気に拡大しました。一部利用できない店舗もありますが、原則としてMasterCardまたはWebMoneyが使えるお店ならどこでも使えます。
例えば、au WALLETはネット通販でも利用可能です。また、(手数料が4%かかってしまいますが)MasterCardが使えるお店なら、海外でも使うことができます。
au WALLETを使って買い物をすると、200円ごとに1ポイントが貯まります。(還元率は0.5%)また、クレジットカードと同じようにauの通信料をau WALLETを経由して支払うことも可能です。この場合は1,000円ごとに10ポイントが貯まります。(還元率は1%)
この点だけをみると、「クレジットカードと比べてポイント還元率は良くないのでは?」と思う人も多いと思います。しかし、au WALLETは電子マネーチャージをする時にクレジットカードを使うことで、ポイントの二重取りができるんです。
■電子マネーに1万円分チャージした場合
①クレジットカードを使ってau WALLETにチャージ
クレジットカードのポイントが貯まります。例えば、ポイント還元率1%のクレジットカードを使えば、1%相当のポイントが、電子マネーチャージによって還元されます。
②au WALLETを買い物で使う
電子マネーとしてチャージした金額を買い物時に消費すると、200円ごとに1ポイントが貯まります。(還元率は0.5%)
ただし、還元率が0.5%というのは「通常時」の話です。au WALLETをau携帯料金の支払いに使うと、還元率は1%になります。また、セブンイレブンやイトーヨーカドー、マツモトキヨシを始めとする「ポイントアップ店舗」で使うと、還元率は1%~1.5%になります。
合計すると、au WALLETを上手く活用することで、1.5%~2.5%の還元率を誇る、お得な電子マネーに進化させることが可能となります。
また、au WALLETはネット銀行の「じぶん銀行」と連携することで、よりお得なカードへと進化します。なぜじぶん銀行なのか?というと、じぶん銀行はKDDIと三菱東京UFJ銀行の共同出資によって誕生したネット銀行だからです。
au WALLETとじぶん銀行の連携サービスは「プレミアムバンク for au」と呼ばれています。手持ちのau IDとじぶん銀行の口座を連携することで、以下の特典が受けられます。
- ATM・振込手数料が完全無料
- 定期預金の金利優遇
- カードローンの金利が最大0.5%優遇
- じぶん銀行の利用に応じてポイントが貯まる
この中でも、特筆すべきなのが「ATM・振込手数料が完全無料」になる特典です。「プレミアムバンク for au」を使うことで、自行あて、他行あてに限らず、振込手数料は完全無料、そしてATM手数料も完全無料で使えるようになります。
多くの方が、毎月ATMや振込手数料にそれなりのお金を使っていると思います。もしその金額がセーブできるようになるとしたら、ポイント還元に換算すると相当な割合になるはずです。例えば、毎月216円の振込手数料をセーブするだけで、実質的には毎月216円のポイント還元を受けているのと同じですからね。
また、もう一つの特典として「銀行口座の利用に応じてau WALLETポイントが貯まる」サービスがあります。
- 給与・賞与の受け取りで毎月50ポイント
- 円普通預金残高が50万円以上で毎月20ポイント
- 他行からの振込入金があると毎月10ポイント(ただし5万円以上)
- au料金やau WALLETクレジットカードの引き落とし口座に使うと毎月10ポイント
- カードローン約定返済の引落で毎月10ポイント
あなたの給料をじぶん銀行の口座で受け取るだけでも、毎月50ポイント(年間600ポイント)が貯まります。これは非常にお得。
「プレミアムバンク for au」を活用することで、au WALLETがお得になるというよりは、じぶん銀行の利便性が大幅に向上するイメージです。
逆に、au WALLETのデメリットとして挙げられるのが、一部の店舗ではサインが必要になることです。au WALLETはクレジットカード支払いのシステムを使っているため、金額に限らず一部店舗では必ずサインが必要となります。iDのように「タッチしてすぐに支払いが完了」とならないケースもあるので注意です。
貯めたポイントは、再びau WALLETにチャージできるので、日常の買い物や携帯料金の支払いに充当できます。ただし、au WALLETはau携帯電話、auひかり、auひかり ちゅらを契約している人だけが持てる電子マネーとなります。ポイントの使いやすさや貯めやすさを考えても、「auの携帯ユーザーにとってよりお得な電子マネー」であることは間違いありません。
ソフトバンクカード
ソフトバンクカードについては、昨日の記事で詳しく紹介しました。
携帯キャリア3社の中でも、電子マネーへの参入が最も後発だったのがソフトバンクです。以前から「ソフトバンクカード」というクレジットカードが存在していたのですが、そちらカードを廃止し、「ソフトバンクカード = 電子マネー」として生まれ変わりました。
ソフトバンクが提携先として選んだのは「Visa」です。使い勝手はau WALLETと同じくチャージして使うタイプの電子マネーですが、ソフトバンクカードは全国のVisa加盟店で利用することが可能です。
こちらもau WALLETと同様に、ネット通販でも利用できますが、クレジットカード支払いの仕組みを応用しているため、リアル店舗でサインを求められるケースがあります。
電子マネーの利用200円ごとに1ポイントが還元される点もauと同じです。(還元率は0.5%)
ただし、ソフトバンクカードの場合は「Tポイント」でポイント還元が受けられるのが大きなメリットです。日常的にTポイントを貯めている人にとっては、ソフトバンクカードを使うことでポイントを合算でき、Tポイントをより効率的に貯めることができるようになります。
また、ソフトバンクカードは通常のTカードとしても使えます。つまり、ソフトバンクカードとTポイントカードを2枚持ち歩かなくても、一体型カードとして活用できます。例えば、電子マネーとして使わなくても、Tポイント加盟店で提示するだけでTポイントが貯まります。
Tポイント加盟店でソフトバンクカードを使うと、「電子マネー利用分+Tカード提示分」でダブルでポイントが貯まります。(還元率は1%~1.5%)
※ソフトバンクカードは、Tカードとしてもご利用いただけます。
TSUTAYA店頭にて会員登録をいただくことで「TSUTAYAレンタル会員証」としてご利用いただけます。
ソフトバンクカードの還元率をさらにアップさせるのが、「おまかせチャージ」という電子マネーのオートチャージ機能です。おまかせチャージを設定しておくと、電子マネーの残高を気にせず使うことができます。
さらに、おまかせチャージを使って自動チャージされた分に関しては、利用時のポイント還元率が2倍にアップし、100円ごとに1ポイントが貯まります。先ほどのTカードとしての利用分も合わせると、1.5%~2.0%のポイント還元が受けられます。
■注意点
注意点としては、「ソフトバンクカードで貯めたTポイントを、再びソフトバンクカードにチャージして使う場合」です。通常、Tポイントは1ポイント1円の価値があります。しかし、貯めたポイントをソフトバンクカードにチャージすると、「100ポイントあたり85円相当」にしかなりません。この使い方はお得とは言えないのでご注意を。貯めたTポイントはソフトバンクカードにチャージせず、そのままお買い物などに使うのが得策です。
次世代の電子マネー?LINE Payとの比較
3つの電子マネーの中で「次世代の電子マネー」と言えるのが、ソフトバンクカードです。実は、ソフトバンクカードには他の2社にはない「送金機能」が搭載されています。で、この送金機能というのが最近話題のモバイル決済サービス「LINE Pay」と非常に似ているのです。
ソフトバンクカードを使った主な送金パターンは以下のとおり。
①ソフトバンクカード会員同士で送金する
家族間や友人間でのお金のやりとりが可能。送金には携帯電話番号を使う。
親が子どもにお小遣いを送金したり、飲み会の割り勘料金を後日、幹事に送金するなど。
手数料は無料。
②金融機関におくる
国内の金融機関口座に送金が可能。例えばオークションの支払い代金を電子マネーを使って送金するなど。
一度チャージした金額を自分の銀行口座に送金して、再び現金化して出金するといった使い方も。
ただし、手数料として200円+税が必要。
③企業が個人に対して送る
企業がキャンペーンなどで個人に対してお金を送金する。
LINE Payについてはこちらの動画を参照。
LINEがリリースしたLINE Payですが、こちらは期待できるサービスではあるものの、「まったく流行っていない」というのが正直な感想。また、au WALLETやソフトバンクカードのような電子マネーが、MasterCard、Visa加盟店で使えるのに対して、LINE Payはこれから利用可能店舗を開拓していく必要があるので、まだまだ普及には時間がかかりそうです。
しかしながら、あのFacebookがメッセンジャーに送金機能を追加(現在は米国のみ)したとのニュースもあり、今後スマホを使ったモバイル決済サービスが普及していく可能性は非常に高いです。
つまり、従来の電子マネーとしての機能と、次世代のモバイル決済の機能を両方兼ね備えたのが「ソフトバンクカード」というわけです。送金サービスは現在準備中とのことですが、LINE Payなどのモバイル決済サービスを意識して作られていることは間違いないでしょう。
まとめ
まとめるとこんな感じになります。
■id(NTTドコモ)
後払い方式
提携関係:独自
ポイント:dポイント
【一言コメント】
唯一の後払い方式電子マネー。クレジットカードありきの電子マネーなので、三井住友カードと連携している。利用可能な店舗は独自開拓している状態だが、電子マネーへの参入が早かったため、使えるお店は多い。ポイント還元はドコモ独自の「dポイント」で行われれるが、2015年12月よりローソン系のポイントプログラム「ponta(ポンタ)」との連携が決まっている。
■au WALLET(au by KDDI)
前払い方式
提携関係:MasterCard
ポイント:au WALLETポイント
【一言コメント】
MasterCardと提携することで、利用可能な店舗を一気に拡大。電子マネーチャージ時にクレジットカードを使うことで、還元率を飛躍的にアップさせることが可能。ポイントプログラムは完全独自だが、携帯キャリアの中では唯一となる「ネット銀行(じぶん銀行)」を保有しているため、ネット銀行との連携サービス「プレミアムバンク for au」によるさらなる特典の拡大が可能。
■ソフトバンクカード(ソフトバンクカード)
前払い方式
提携関係:Visa
ポイント:Tポイント
【一言コメント】
電子マネーとしては最後発だが、Visaと提携し利用できる店舗を拡大。独自のポイントプログラムがなく、業界最大の「Tポイント」と連携することで強みを発揮している。また、Tカードとして使うこともでき、TSUTAYAのレンタル会員証としても利用可能。オートチャージ機能となる「おまかせチャージ」を使うことでポイント還元率が通常の2倍にアップ。
私はiDが出た当初から、ずっとiDを使いまくっているヘビーユーザーです。しかし、こうやって3社を比較してみると、NTTドコモのiDは見劣りしていると言わざるを得ません。。。
また、携帯キャリアとしては「電子マネーのお得度を大きく引き上げる変わりに、携帯顧客の囲い込みを狙っている」こともわかります。
つまり、au WALLETはauユーザーにとってお得、ソフトバンクカードはソフトバンク携帯のユーザーにとってお得な電子マネーと言った具合。
現在、ソフトバンク携帯を契約している私が、ドコモのiDを使っているのは非常にメリットが小さいです。。。ということで、近いうちにソフトバンクカードに乗り換えようかなと画策しています。
みなさんは、電子マネーやクレジットカード、そして携帯キャリアの利用状況はいかがでしょうか?
私のように、ソフトバンクユーザーなのに、ドコモのiDを使っていたりしていませんか?
これらのサービスを定期的に見直しすることで、驚くほどお得になるケースもあります。是非この機会に見直し、乗り換えを考えて見てはいかがでしょうか?
(書いた人:川原裕也)