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スーツ代わりに着物で出勤…経産省が促す「きものの日」に関する5つの問題点

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経済産業省が職員に対してスーツの代わりに和装での出勤を促す「きものの日」の導入を、早ければ来年度から行なうことを検討しています。

まずは霞ヶ関全体での「きものの日」設置に向けて、他の省庁と連携して進めて行く……という話なので、地方自治体や民間企業まで着物出勤が促進されるのは、ずいぶん先の話になりそうです。

それでも「なぜ今になって着物出勤を促すのか?」「どのような人々が着るのか?」など、色々な疑問が出てくる経産省のきものの日・着物出勤の具体的なところや、実施による問題点についてまとめてみました。

きものの日とは?

狙いは「和装産業の振興を図るため」と「日本の魅力向上」

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そもそも経産省が着物出勤を促進するのは、国内和装産業の振興を図る為

着物の出荷額は昭和50年代のピーク時には1兆8,000億円規模を迎えましたが、景気の悪化や洋服文化の普及、着物の高額化などの影響を受けて、現在は3,010億円(2013年)とピークの1/6まで衰退しています。

スーツの代わりに着物で出勤できる雰囲気を作ったり、和装文化を学ぶセミナーやイベントを開催したりすることで、着物を日常生活に取り入れることを目指しています。

また着物は海外でも注目を集めており

  • 着物を日本文化の一つとして、産地の伝統文化・技術・技能・職人文化を民俗文化芸能として発信する。
  • 世界でファッション・コスプレとして、Ninja, Samurai, Maikoと共に発信する。
  • 和装でおもてなしをするホスピタリティ産業(旅館、レストラン、温泉、テーマパーク)を広げていく。
  • 「日本を着る・味わう・感じる・遊ぶ」というコンセプトで海外への日本文化を発信する。

……というのも狙いにあります。海外からの観光客が増えるであろう、2020年の東京オリンピックも視野に入れた取り組みと見ても良さそうですね。

実施日は7~8月、11月15日、仕事始め・仕事納めなど

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「きものの日がいつ頃実施されるのか?」は、複数の案が出ている段階で、まだ実施日が決定していません。 

実施日としては「7~8月」「11月15日」「仕事始め、仕事納め」と3つの案が提出されています。
一応「年がら年中実施」ではない分、実践しやすい取り組みだと言えますね。

案1)7~8月
・浴衣での出勤も可能として、打ち水などのイベントなどと連携しながら「省エネで夏を過ごす方針」として打ち出す。
・小袖※が日常着だった江戸時代の着用の原点を振り返る。

小袖(こそで):袖幅がやや狭く、袖丈の短い衣服。今の着物の原型になった。

案2)11月15日
・11月15日は一般社団法人全日本きもの振興会などが、着物の復興の為の取り組みを行なう「きものの日」にしており、関係業界と連携を図ることが重要とする。
「きものの日」は1966年に制定されたもので、11月15日は七五三の日に当たる。「七五三の日に、家族そろって着物で出かけてほしい」という理由から。

案3)仕事始め、仕事納め
・着物の着用にはハードルがあることから、仕事始めや仕事納めなどの、季節季節で少しずつ着物を切る機会を増やす。

着物出勤、きものの日の問題点とは?

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着付けに時間がかかる

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自分で着物を着付ける場合は、慣れた人で30~40分、初心者だと1時間以上かかることもあります。

頑張れば1分未満ですぐに着れるという洋服と比較すると、どうしても何十倍も時間が掛かってしまいます。

初めからお太鼓結びになっている「作り帯」などを利用することで時間短縮は図れますが、何かと時間が限られる朝の大切な時間に、着るだけで30分以上かかったり、着付けの時間を確保する為に早起きをしたりするのは、面倒な他ありません。

ちなみに美容院などで着物を着付けを頼む場合、所要時間は1時間ほどかかるので、かなり早起きをしないといけません。
また出社前に着付けるとなると早朝料金が発生する可能性もあります。

通勤が大変になる

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会社までの移動手段を考えると「車」「電車」「バス」「自転車」「バイク・スクーター」「徒歩」が考えられますが、どれも着物や浴衣を着た状態で利用するのは、なかなか簡単なことではありません。

着物に着慣れた人であれば「意外と平気。何とかなる」と言うかもしれませんが、年に何回しか着ない人にとっては、あまり有益な話とは言えませんね。

満員の車内でもみくちゃにされて着付けた着物や帯が乱れたり、運転の度に運動靴に履き替えたり、「危険だから」と乗ること自体諦めたり……など考えると、日常的に着物を着て出勤・仕事・退勤をするのはハードルが高いです。

「着物は不便」と感じる業種が多い

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「着物や浴衣を着て作業をする仕事」と言われて、パッと思いつくのは和食系の飲食店、旅館、呉服屋、デザイナー、クリエイター、イベントスタッフくらいでしょうか。

私の一日中パソコンに向かって作業をする仕事で、夏の間に何度か浴衣を着て仕事をしたことがありましたが「動かない割に着崩れやすい」という印象を強く持ちました。

  • 背もたれ付きのイスに座っている→帯が歪む
  • 足を組み替えることが多い→裾の乱れ
  • 何かと移動することが多い→裾の乱れ
  • 荷物や資料を移動したり、持って歩いたりする→上半身の乱れ

……というように、動作が少ないように思える座り作業が多い事務系の仕事でも、意外と着崩れてしまいます。

本人の着こなしや着崩れの防止策にも寄りますが「着物を着ていても、作業に支障が出ない」「就業開始から終了まで、一度も着直さずに済む」作業や業種というのは、非常に限られてくるように思います。

何かとお金がかかる

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「着物は高い」というイメージ通り、一式揃えるとなると数十万円かかることも少なくありません。

これは消費者の着物離れにより、安価な着物を着なくなったことで、呉服業界が高額商品で採算を取るように矛先を変えたのも大きな原因の一つです。

例えば「11月15日は着物出勤日」として義務化されてしまうと、着物を一揃え用意したり、美容室で着付け※を頼んだり、着終わった後にクリーニングを出したりすることを考えると「たった1日の為に、高価な値段を個人が負担してまでやる必要があるのか?」と思ってしまいます。

「カジュアル着物」と呼ばれる、木綿やポリエステルの洗える着物であれば、まだ気軽に着やすいと思いますが、「カジュアル過ぎるので、仕事着として相応しくない」と言われてしまえば、どうしようもありませんね。

会社や業務に応じたドレスコードが分かりにくい

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着物も洋服と同様に「高級品/安価なもの/普段着/部屋着/よそ行き」というように、TPOに応じて着分けます。
では、会社ではどのタイプの着物を着て行けば良いのでしょうか?

「着物で出勤」に関しては、ほとんどの企業で前例が無いこと。

普段はカジュアルファッションで過ごしている人が、社会人になってスーツやオフィスカジュアルを着ようと思っても「何を着て良いのか分からない」と悩む以上に、会社や業務に応じたドレスコードが分かりにくいというのも問題ですね。

普段着着物の代表格、ポリエステルの着物は、「買い物やカフェ、レストラン、芸術鑑賞、カジュアルな食事会に着て行ってもOK」と言われますが、会社に着ていけるかどうかは「会社による」としか言えません。

大手呉服屋や衣料量販店がモデルとなるような「ビジネス着物」を発表したり、着物専門誌だけではなく女性ファッション誌や男性ファッション誌が「ビジネス着物コーデ」特集を組んだりしない限り、一般企業までの浸透は難しいように感じます。

最後に

着物に関しては「特別な日に着るもの」「着方や作法、着物を詳しく知っていないと着られない」というイメーシが強く、なかなか日常着にするにはハードルが高いものです。

経済産業省が打ち出す「着物を日常着にする」は、以前のクールビスのように多くの人が賛同して速やかに一般企業まで導入されるのは、デメリットや問題点の多さから難しいように感じます。

着物で出勤を推奨するのであれば「ビジネス着物、会社で着物を着る上でのドレスコードの制定」「安価で気軽に着られる着物の需要を増やす」「導入団体に対する補助金の支給」なども考えてみる必要があります。

早くて来年の6月に実施予定の「きものの日で着物出勤」、これからの動向に注目していきたいです。

(書いた人:昼時かをる)