建国50周年を迎えてますます盛り上がりを見せるシンガポール。
私も今年の夏にシンガポールに行ってきましたが、経済とエンターテイメントが混在する、優れた都市だという印象を受けました。最近は、効率的で住みやすいシンガポールの街を丸ごと輸出する企業も登場しています。
シンガポール丸ごと輸出 政府系テマセク傘下企業(日経・有料)
以前から私もシンガポールの企業に注目していたので、今回はシンガポール発の優秀な6社をまとめました。
シンガポール航空
シンガポール航空(シンガポールエアライン)は、世界でも満足度が高いと言われる航空会社。エイビーロードの「総合満足度ランキング」では4年連続1位となっているほど。
多人種・多文化な客室乗務員がおり、シンガポール航空への就職を希望するCAさんも多いと聞きます。
ビジネスクラス以上であれば、60種類以上の機内食を選ぶことができます。また、シンガポール航空には、ファーストクラスのさらに上となる「スイートクラス」があることも有名です。
また、シンガポール航空が拠点にしている「チャンギ空港」は、エンターテイメント性のある空港で、空港内を観光するのも楽しいです。チャンギ空港は、毎年連続で世界No.1の空港としてランクインしており、これまでに390以上の賞を受賞しています。
シンガポールに行った時のチャンギ空港の写真です。
空港内にある巨大ドリアン。
空港内の庭園。
掃除夫を5段階評価できる仕組み。これによってトイレがきれいに保たれている。
私もシンガポール航空に搭乗しましたが、ご飯のクオリティは高かったです。ただ、CAさんは日本語が話せない方も多かったというのが印象に残っています。
シンガポール航空はスターアライアンスメンバーなので、日本だとANAと同じ航空連合に属していることになります。
シンガポール・テレコム
シンガポールの通信会社で、通称「シングテル」と呼ばれています。中国を除いてはアジア最大の携帯事業者で、シンガポール国内だけでなく、多くの国で事業を展開しています。
元々は政府公社だったのですが、1992年に民営化されており、日本でいうとNTTみたいな位置づけです。しかし、ベンチャー並みのスピードで次々と事業を拡大していくスピード感は、シンガポール企業ならでは。
例えば、シンガポール・テレコムは2014年に「ダッシュ」という電子マネーをリリースしています。
お店での支払いはもちろん、個人間送金や個人ローンまでが行える電子マネーアプリです。日本だとこういう取り組みはたいてい、ベンチャー企業が最初に行いますが、シンガポールでは政府系の企業が率先して新しい取り組みを実施します。
シンガポールにも携帯事業者は3社あり、
- シンガポールテレコム(業界1位)
- M1(業界2位)
- スターハブ(業界3位)
となっています。
シンガポール・ポスト
シンガポールの郵便局です。
日本郵政と同じく、郵便事業の他に物流や金融事業を手がけています。
日本郵政も先日上場を果たしましたが、シンガポール・ポストは2003年に上場、そしてベンチャー企業もビックリの数多くの取り組みを行っている会社です。
例えば、3Dプリンタを使ったトランスポーテーション。人の手で配達をしなくても「データをメールで送付 → 現地の3Dプリンタで商品を製造」という方法なら、配送コストが0円で済みます。
3Dプリントサービスは、すでに多くの国で郵便事業者や物流事業者が手がけているのですが、日本ではまだその足音すら聞こえないのがとても残念です。。。
そして先日は早くも、ドローンを使った郵便配送に成功しています。
こちらは2015年に導入された、東芝が手がけた郵便物自動処理システム。
シンガポール・ポストが次に狙っているのは、国際物流の分野です。シンガポール・テレコムが東南アジアに事業領域を拡大しているのと同様に、シンガポール・ポストも東南アジアへの物流サービスを強化しています。
そのために行われたのが、中国最大のEC事業者である「アリババ」の資本を受け入れたことです。現在、中国のアリババはシンガポール・ポストの株式を約15%取得しています。
これはつまり、日本郵政の株式15%を外資系企業が取得するのと同じです。歴史ある政府公社系企業の株式を大量に取得するというのは、今の日本では考えられませんよね。。
この提携によってシンガポール・ポストは、アリババの持つ物流網を活用し、東南アジアに効率的な物流ネットワークを形成、中国からインドネシアへの配送時間は従来の半分にまで短縮されています。
キャピタランド
キャピタランドはシンガポールを拠点にしている不動産会社です。日本でも経済ニュースなどを見ていると、たまに目にする会社。
シンガポール オーチャード・ロードの巨大ショッピングモール「アイオン・オーチャード」は、キャピタランドが手がけています。
アイオン・オーチャード
キャピタランドが事業を展開するのはシンガポールだけでなく、中国やオーストラリアなど多岐に渡っており、東南アジア最大の不動産デベロッパーとなっています。海外に行った時に街を歩いていると、「Capitaland」のロゴマークをチラホラ見かけます。
ちなみに、このキャピタランドも政府系の企業です。
グローバル・ロジスティック・プロパティーズ
グローバル ロジスティック プロパティーズ(通称GLP)は、シンガポール政府系の企業で物流施設の運用に特化した不動産会社です。シンガポールと中国を中心に、すでに33都市に事業を展開。
最近は、アメリカにも物流事業を拡大し、すでに米国第2位となっているのだとか。。。
この取引でGLPの米国での物流施設ポートフォリオの総延床面積は50%増の1610万m2まで拡大し、GLPは米国マーケットへの参入からわずか1年で米国第2位の規模の物流施設の所有・運営者となる。
日本ではJ-REITとしてGLP投資法人が上場しており、日本国内にも数多くの物流施設を保有し、運用を行っています。
ケッペル
日本では見かけませんが、ケッペルも東南アジアのビルを眺めていると、たまに見かける会社です。
不動産事業だけでなく、造船やインフラ、海洋掘削まで幅広く開発事業を手掛けるコングロマリット(複合企業)です。特に、海洋石油掘削機の製造企業としては世界最大となっています。
シンガポールのビジネストラストには、ケッペル関連の銘柄がいくつか上場しているのですが、データセンターや携帯の電波設備、、下水処理、浄水場など、インフラ系の事業を中心に、とにかくなんでもやってる感じです。
シンガポール第2位の通信会社「M1」は、ケッペルとAxiataという会社によって設立されています。もちろんケッペルも政府系の会社です。
ベンチャー精神を持った大企業がたくさん
なんか自分が紹介したかった企業ばかり集めてしまいました。。。
私が思うのは、多くのシンガポールの大企業がベンチャー精神を持って積極的な取り組みをしているということです。
日本だと大抵、政府公社や政府が支援している企業はダメ企業だと言われます。しかし、シンガポールは政府系の企業がとても優秀です。
大企業であっても、小さなベンチャー企業と連携して新しい技術を試みたり、合理性があると判断すれば、外資系企業の資本も喜んで受け入れます。
このような勢いのある大企業が、今後ますます世界への影響力を強めていくんじゃないかと感じましたし、日本の大企業にももっと頑張って欲しいなと思いました。
(書いた人:川原裕也)
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