小さいころに比べて、なんだか野菜が食べやすくなった気がする、そう感じたことはありませんか? 昔は、トマトなども青々しいものも販売されており、ピーマンも苦くて食べられなかった印象がありますが、最近の野菜はかなり食べやすくなっている気がします。
こうした背景には、いくつかの要因があり、そのひとつが品種改良。野菜の品種改良が進み、より食べやすい味の野菜に変化しています。味以外にも、包丁でつぶれず切れやすいトマトやひと口で食べられる柿など、消費者のニーズに合わせて野菜も進化しているのです。
もう一つの要因は、従来の旬の季節以外にも食べられるようになったこと。野菜は旬の季節がもっとも栄養価も高いため、野菜特有の苦みやえぐみも強く出ますが、最近はどの野菜もいつでも手に入れることができるため、旬でない時期に口にすることも増えたのです。その結果、食べやすく感じることが増えているということです。
そしてもうひとつ、まことしやかに言われているのは、日本の畑の栄養素が減っているというウワサ。畑の栄養分が少なくなったため、野菜の栄養価も下がり、苦さや臭みがないことから食べやすくなっているというもの。これは本当なのでしょうか?
気になって、日本の農地土壌について調べてみると、農林水産省生産局環境保全型農業対策室が、この課題について取り組んでいることがわかりました。
そもそも日本の農地土壌は生産力が低い
農業立国の強い日本ですが、実は土壌で見ると、農業は不向きなのだそう。火山灰土壌が多く、その性質も不良。また、温暖多雨な気候であり、急峻な地形が多いため栄養素が土壌にとどまらず、流失しやすいのだそうです。昭和34年から53年にかけて行われた地力保全基本調査によると、何らかの土壌生産力阻害要因を持つ不良土壌は、日本の耕地全体の52%を占めていたそうです。
そうした土壌を持つことから、地力増進法において地力増進基本方針を策定し、長年にわたって土壌の改善を図ってきたのだそうです。
ここにきて立ちはだかるのは労働力減少と高齢化
具体的には、畑にたい肥を施用することによって、土壌の地力を保ってきました。しかし、昨今は農業従事者が減り、また従事者の高齢化が進んだことによって、たい肥をはじめとする有機物投入量が年々減少傾向にあり、4割の畑では有機物含有量にかかる改善目標を下回っているそう…。
特に不足しているのがマグネシウム
土壌の成分のなかで、特に不足しているといわれるのがマグネシウム。マグネシウムは糖尿病や高血圧、大腸がん抑制などに効果が確認されており、昔の日本人はマグネシウムを農作物から摂取することで健康を保ってきました。
マグネシウムは野菜の成長にも欠かすことのできない成分。直物の根を強く張らせる役割があるほか、植物の細胞内における栄養素搬送などにも関与していることから、不足すると植物を枯らしてしまう原因にもなります。
土壌の改善には、長い時間がかかります。日本は高齢化時代に突入し、少子化で人口減にあることから、農業従事者が増加していくケースは考えにくいです。野菜を食べているから、栄養バランスは安心、というわけにはいかない時代になってきているようです。
(書いた人・考務店)