御嶽山、箱根山、口永良部島…。昨年から今年にかけて、日本全国の火山で噴火が相次いでいます。噴火が頻繁に起こるエリアに住んだことがある人ならまだしも、一度も噴火被害の経験のない人にとっては、生活にどのような影響や変化を与えるのか、いまいち実感しにくいという人も少なくないのではないでしょうか?
「避難所生活が始まる」「洗濯物が干せない」程度の変化は思い浮かぶでしょう。しかし、噴火の被害はそうした日常だけでなく、社会的インフラに与えるものが数多いのです。
当然、噴火の規模にもよりますが、もし、噴火が起こったら…。いったいどんなことが起こり得るのか? 調べてみました。
その1 携帯電話・スマートフォンが利用不可になる
1707年に発生した富士山の宝永噴火の場合は、16日間の間噴火が続きました。その後、上空に離散した火山灰は1~2週間かけて風に乗り、広範囲に降灰します。大災害後は、それぞれの無事を確認する人が増えるため、ただでさえ携帯電話網はパンクしがちですが、交配によって通信障害が発生する意可能性も高く、よりいっそうの混乱が予想されています。
平成14年3月に行われた内閣府の「富士山噴火による被害想定調査」によると、過去には雲仙普賢岳が噴火し、火砕流が発生した際、計測センサーの電波信号が受信できなかったことがあるといいます。実際どの位の通信障害が発生するかは、噴出する火山灰の量や、火山灰に含まれる鉄分の含有量にも左右されるそう。しかし、それによってどのくらいの被害になるのかは、厳密な予測は立てづらいとされています。
その2 高速道路・一般道路が利用不可&大渋滞
噴火によって降灰が起きると、道路の白線が視認できなくなります。また、道路上に積もった火山灰によって車はスリップしやすくなり、過去の事例では、1~2cm以上の堆積によって、道路通行に支障起きるそう。
ちなみに、2000年に起きた有珠山噴火の場合は、2cm以上の火山灰の堆積によって降灰除去を実施したそうですが、この基準は国によって定められているわけではなく、地域によってバラバラです。
影響は道路だけでなく、自動車にも及びます。自動車のエアフィルターは、5万km走行ごとに交換を推奨されていますが、火山灰によってどのくらいフィルターを目詰まりさせるのか、メーカーは自社調査結果を明らかにしていません。
その3飛行機が止まる
前述内閣府調査によると、降灰した火山灰をエンジンが吸い込むと、エンジン内で火山灰が熱によって溶解。これが、エンジンを冷却するための冷却孔で冷え固まり、排熱がスムーズに行かなくなったエンジンは停止する可能性が高いとのこと。実際に、1991年に起きたピナツボ火山の噴火時は15機以上の旅客機が火山灰の被害にあい、うち5機がエンジン停止や損傷等のトラブルにみまわれたそうです。
その4 鉄道が減数運行や運休
レールに火山灰が堆積すると、車輪が空転し、スリップする恐れがあり、降灰の規模によっては除灰が必要になります。しかし、それがいったいどの程度の規模の降灰からなのか、火山噴火が発生するエリア以外では明確な基準がありません(鹿児島では灰が2mm以上になると除灰を実施しています)。
その5 パソコンや電子機器が壊れる
2mm以下の火山噴出物を火山灰と呼びますが、その大きさは様々。なかには、10ミクロン未満(1ミクロンは1000分の1mm)という微粒子のものもあり、ちょっとした隙間から室内や電子機器のなかに侵入していきます。
多くの電子機器には、内部の熱を排出するための吸入口ファンがあり、火山灰はここから内部へ侵入。電子機器の基板の静電気によって、基板上に付着し、ショート等を起こしやすくなり、多くの機械は故障する可能性が高いといわれています。
その6電気が止まる
もし長期間にわたって降灰が続いた場合、火力発電所では、フィルターが火山灰によって目詰まりを起こし、このフィルターを清掃するために一時停止する必要があり、電力供給が弱まる恐れがあります。
過去には、1991年ピナツボ火山噴火時、在フィリピン米空軍の火力発電所が降下火山灰の下にさらされた際は、あらかじめフィルター未設置のタービン搭載の発電プラントは停止。建屋内にタービンを設置し、フィルターを設置したことによって発電が可能にしたといいます。
その7上・下水道が止まる
降灰の量にも左右されますが、降灰によって取水地に大量の沈殿が認められた場合、一時的に取水を停止し、清掃する必要があります。1978年の北海道・有珠山噴火の際には、虻田町三豊にある上水道浄水場に1cmの降灰があり、これがろ過用の砂に付着したことで目詰まりを起こし、ろ過ができなか唸るという事態が発生。近隣2000戸の給水がストップしました。
また、下水に関して言えば、降灰した火山灰が下水に流れ込むことによって排水溝が詰まってしまうことが予想されています。火山灰は水に溶けることがありません。火山灰を除去するためにと、水を撒いてしまう人が増えると、都市の下水機能はマヒしてしまい、下水を利用できなくなります。
その他、(8)肺や目に火山灰が入ることから起きる健康被害や、(9)インフラ網のストップによる流通機能の停止、(10)濡れた火山灰の重みによる住宅倒壊など、噴火の被害は広範囲で甚大! 「まさかないだろう…」とたかをくくるのは危険。いざという時のために、家族や恋人と対応について話し合い、1週間分の食料など、蓄えは十分に!
(書いた人:考務店)