歩きながらスマートフォンの画面を見たり、操作したりする「歩きスマホ」。
以前から事故やトラブルに繋がるとして、社会的な問題になっていますよね。
そんな歩きスマホに拍車を掛けそうなアプリゲームが、日本でも配信されました。
それが任天堂とINGRESSのNiantic社がタッグを組んだ「ポケモンGO」です。
「スマホのカメラで画面を見ながら、ポケモンを探す」というゲームの特性上、どうしても「歩きスマホ」が起こりやすくなってしまいます。
すでに海外でも歩きスマホや、自転車に乗りながら、自動車を運転しながらの「ながらスマホ」による事故が各地で発生していますが、この問題は日本でも充分に起こり得ることです。
今回は「歩きスマホの危険性」について、今一度確認してみたいと思います。
歩きスマホは何が危険?
視界が極端に狭くなり、注意力が散漫になる→事故やトラブルに巻き込まれやすい
スマホ操作時の視界は通常歩行時に比べてかなり狭く、対象物にはギリギリまで近付かないと認知できません。
集中してスマホを使えば使うほど、危険度が増すので、思わぬ事故やトラブルに繋がりやすくなります。
愛知工科大学工科学部情報メディア学科 小塚一宏教授の「ながらスマホ」実験の動画を見てみると良く分かりますが、
▼手ぶらで歩いた時
▼歩きスマホ時
手ぶらだと近づいてくる人や周囲をまんべんなく見ているのですが、歩きスマホになると視線は下向きでスマホばかり見ていることが分かります。
歩きスマホの危険性
交通事故・接触事故に巻き込まれやすい
「もしも渋谷スクランブル交差点を横断する人が、全員歩きスマホだったら?」
NTT docomoが歩きスマホ事故防止の啓発活動の一環として作成したシュミレーション動画です。
スクランブル交差点を横断する1,500人全員が歩きスマホだった場合
衝突件数:446件
転倒件数:103件
スマホ落下件数:21件
横断成功者:547名 / 1500名
という事案が発生するという結果を紹介しています。
では実際歩きスマホによる事故は、どれだけ発生しているのでしょうか?
東京消防庁管内では、2011年から2015年までの5年間で、歩きスマホなどによる事故により、少なくとも172人が緊急搬送されています。
歩きスマホに関連する事故で多いのが「ぶつかる」「転ぶ」「落ちる」の3点。
ケガの程度は入院の必要がない「軽症」が8割近くを占めます。
入院が必要な「中等症」は16.4%、「重症」および「重篤」は3%程と少ないのですが、決して軽視できない数値です。
年齢区分別で見ると、最も多いのは40代(36人、23.6%)。次いで20代(31人、20.4%)、30代(28人、18.4%)が続きます。
歩きスマホをするのは「20~30代の若者」という印象が強いのですが、緊急搬送まで至るほどのケガに繋がるのは中高年が多く、50代以降はスマホ普及率が低いことの表れのように思いますね。
引ったくり被害に遭いやすい
スマホ画面を注視&イヤホンで両耳をふさいでいると、人が近付いて来ても分からないことが多々あります。
注意力散漫で無防備な姿は、引ったくり犯からしてみれば「恰好の標的」と言えるでしょう。
実際に引ったくりで捕まった犯人の中には「操作しながら歩く女性は狙いやすかった」と供述している人も少なくありません。
「歩きながらスマホを操作している人に、背後から自転車やバイクで近付き、目当ての品を奪って逃走」が常套手段。
カバンだけではなく、操作中のスマホ(特にiPhoneの新型機種)も引ったくり被害に遭いやすい品物の代表例と言えます。
性犯罪・痴漢の被害者にもなりやすい
歩きスマホを狙った犯罪は引ったくりだけではなく、歩きスマホで無防備になった女性を狙う性犯罪や痴漢被害も相次いで起きています。
「ある強制わいせつ事件では、帰宅時に背後から男が室内に入り込んだことを、被害者の女性がイヤホンをしていた為に全く気付かなかった」
「スマホを操作中で接近に気付かない女性の胸やお尻などを触り、すぐに逃走する」
という事件は、残念ながら良くある事なのです。
人が自分に近付いて来ても分からない状態で、襲われたり、触られたりするとパニックに陥りやすく、突然、起きた事態に対する事後対応も遅れがち。
「スマホを持ち歩いているから、万が一の事態もすぐに連絡が取れる」とも思うのですが、そもそも隙を見せている時点でOUTです。
劇場版 名探偵コナンのオープニングの台詞で「取り引きを見るのに夢中になっていたオレは、背後から近付いて来る、もう一人の仲間に気付かなかった。」と言うのがありますが、それと似たような状況が、ながらスマホでも起きてしまいます。
女性が一人、夜道を歩く時は「ながらスマホをしない」「周囲を確認したり、警戒したりする習慣を付ける」など、無防備な姿を見せない対策は必要でしょう。
落下物で電車が遅延 23%がスマホ
電車を待っている時「●●駅で線路内落下物拾得のため遅延」という遅延理由を見たり聞いたりしたことはありませんか?
線路へ落し物をした場合、基本的に次の電車が来る合間に、駅員が専用の器具を使って拾い上げてくれます。
ただし後続の電車が迫っている場合は、運行を一度止める必要があり、それが遅延の原因となってしまいます。
線路内の落し物と言えば、以前は「傘」や「帽子」が多かったのですが、最近は「スマホ」や「携帯電話」の落し物が目立っています。
JR東日本の電車の遅れにつながった線路への落とし物のうち2割は、スマートフォン(スマホ)などの携帯電話だったことが同社の集計で分かった。
JR東が集計の対象にしたのは茨城、栃木、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨の1都6県の駅。4~5月、落とし物のため運行が1分以上遅れた229件のうち、原因が携帯電話だったのは、全体の23%に当たる54件だった。他に、傘や帽子、靴などもあった。
乗降時やホームを歩いている際に落としたケースが多い。落とし物は駅員が専用の器具を使って拾い上げるが、後続の電車が迫っている場合は運行をいったん止めざるを得ず、遅れにつながってしまう。
落としたケースは「乗降時やホームを歩いている際」が多いと記事にはありますが、歩きスマホが原因となっている可能性も少なくないです。
(以前、駅のホームで電車を待っている時、スマホでTwitterを見ていた際、何かの調子でスマホがツルッと滑ってしまい、危うく落としかけたことがありますが、このケースは少数派のようですね……)
最近は「スマホリング」という、リングを指に引っ掛けることで スマホの落下を防止するスマホアクセサリーも発売されています。
スマホの機種によっては、カバー無しだと滑りやすいことも多々あるので、歩きスマホの有無問わず、落下防止策は取っておいた方が良いですね。
駅のホームから転落、電車と接触
駅構内の歩きスマホによる事故としては、
- スマホを見ながら歩行中、誤って駅のホームから転落する
- 電車が近くまで来ているのに気付かず、電車と接触する
というケースが目立ちます。
東京消防庁によると、駅のホームから転落による緊急搬送は、11年3人、12年1人、13年4人、14年0人、15年5人……と年々、増加傾向。
人数的には少ないように思いますが「緊急搬送された人数」なので、ホームから転落した人は上記の人数よりも多いのは確実。
ホームから転落しないように注意していても、後ろから人にぶつかられた場合、スマホに集中している分、どうしてもとっさの反応が遅くなり、ケガや転落に繋がりやすくなります。
またスマホを操作しながら乗り降りする人に対しては
- 前を見ていない為、ぶつかられた
- 急に立ち止まられるので危険
という苦情も寄せられています。
電車の待ち時間が長いと、ついついスマホを触ってしまいがちですが「歩きスマホをしない」や「立ち止まってスマホを見る時も周囲に気を配る」ことは必要不可欠ですね。
いかがでしたか?
歩きスマホに対しては、CMや駅構内にて「Stop歩きスマホ」の広告で注意を呼びかけたり、携帯電話各社が歩きスマホ対策のアプリを用意したりしていますが、それでも歩きスマホが顕著に減ることはありません。
個人的にはポケモンGoで遊ぶのは非常に楽しみなのですが「歩きスマホ」や「公共マナーの無視」など、心ない一部の利用者によって、ゲームの評判を著しく下げてしまうのは、絶対に嫌だなぁと思っています。
対策はどうしても後手後手になってしまうので「自分は歩きスマホを絶対にしない」と一人ひとりが意識して行動することが、無用な事故やトラブルを防ぐ為に何よりも大切なことではないでしょうか。
(書いた人:昼時かをる)