個人事業主として2年、株式会社としてもうすぐ5年目に突入します。
27歳になる年に起業した時は、過去も未来も決して明るくはありませんでした。しかし、今になって振り返ると、20代で起業できたことは、これまで何も持っていなかった自分にとって、逆に恥をかきやすい年齢でよかったと感じています。
自営業者になってからは、特にたくさんのことに興味を持ち、自分なりに勉強もしてきました。しかし、振り返ってみると、必要な知識は意外と地味で基礎的なものばかりだったと思います。
身につけて良かったと思うもの
会社を何年か続けてきて、これは身につけておいてよかったと思える資格や知識を考えると、以下のようなものがありました。
簿記検定(2級)
経営に必要な資格なんて本当は一つもないのですが、簿記検定だけは取って良かったと今でも思います。もし、起業する前に資格を1つ取るとすれば、私は簿記を選びます。
個人事業主の時は、帳簿付けから決算処理(確定申告)まで、すべて一人でやっていました。1期目は何の知識もないまま会計ソフトを買って、ネットを見ながら適当に帳簿を付けていたのですが、簿記取得後に見ると、驚くほど間違いがありました笑
簿記の資格を取ると、会計の知識を持っていなかった自分が、いかに適当に帳簿を付けていたかが明確にわかります。
例えばクレジットカードを使って鉛筆を1本買った場合に、お金がどのように動くのか、その費用項目が決算書ではどの部分に該当するのかがはっきりとわかるので、経営にも役立ちます。
また、簿記検定は数ある資格の中でも簡単な部類なので、3級も2級も、1ヶ月ぐらい勉強すれば誰でも取得できると思います。
私は「日商簿記」の資格を取りましたが、個人事業主であれば3級、株式会社をやるなら2級があれば十分かと思います。
帳簿付けはいまだに自分でやっていますが、現在は法人としてやっているので、決算に関しては税理士に丸投げしています。
簿記3級の勉強にあたっては、本も何冊か読みましたが、合格TVというサイトがとても役立ちました。動画を見ながらわかりやすく簿記3級の内容を教えてくれます。(3級は無料で動画が公開されています)
決算書の読み方
自社の決算はもちろんですが、他社の決算も読めるようになると役立ちます。
例えば、上場企業は決算書を公開しています。決算書が理解できると、上場している同業他社の利益率や、費用の使い方がわかります。
または完全異業種であっても、例えば「アパレルは意外と儲からないんだな」とかがわかります。
「服を安く大量生産して、ブランド力で10倍の利益を乗せて売るからアパレルは儲かる」というのは、私の友人が実際に言っていた言葉ですが、アパレル業は利益率は、実はそれほど高くありません。
その理由として、販売スタッフの給料が高い、テナント賃料が高い、円安になることで仕入れコストが上がる、ブランド力を維持するために多額の広告費が必要、季節要因やファッショントレンドの変化によって想定外の在庫が生まれるなど、様々な理由から決して楽な商売ではないことが、決算書を通して見えてきます。
外側から見える「儲かっている感」とは裏腹に、決算書を見ることで「本当のところはどうなのか?」が数字として見えてきます。
また、株式などに投資する経営者も多いと思いますが、そういった時にも決算書を見る力は役立ちます。
簿記の知識があって、決算書が読めるようになると、自然とコスト意識が芽生えるように思います。会社経営をする上で、やはりお金の管理は非常に重要だと思うので、お金の管理ができる人に任せるか、自分でやるかのどちらかしかありません。
組織としてやるならそれぞれが特化した専門知識を持てばよいのですが、仮に個人事業主としてやるならば、基本的にはすべての作業を一人でやることになるので、事務処理を含めて、いろいろな仕事をまんべんなくこなせるのが良いと思います。
ITの知識
プログラミングなど、ITの技術を身につけなくても、新しい技術から生まれたサービスを使いこなす力を持っていると、起業する業種限らず役立ちます。
理由として、インターネットを活用したサービスは総じて安いからです。
高額なPOSレジを導入するよりも、ユビレジやAirレジといったiPadを使ったアプリを活用する方が安く済みます。また、クレジットカードを導入するなら、楽天スマート決済やSquareを使うと決済手数料も抑えられます。
会社を作ると、OA機器の営業スタッフなどからすぐに連絡が来ますが、私からすると、そういった人たちは無知な経営者を食い物にしているようにしか見えません。
最新のITサービスを知っておくだけで、コストが10分の1以下に抑えられることもあります。
では、そういった知識を身につけるにはどうすればよいか?という話ですが、スマートニュースなどのネットニュースのまとめ情報を見るだけで良いと思います。
また、最近はネットサービス各社がオウンドメディアと言って、自社製品の宣伝を越えた情報を配信していることも多いので、参考になります。
例えば、会計ソフト「freee」を展開するfreee社の経営ハッカーや、MFクラウド会計を提供するマネーフォワード社のMFクラウド公式ブログなど。
もちろん、クートンブログでも「クートン.biz」というカテゴリで、私が学んだビジネス向けの知識を共有しています。
また、昨日書いた記事に弊社で導入しているツールなども記載しているので、参考にしてください。
blog.qooton.co.jp
経済の知識
経済の知識も何かと役立ちます。
これまで、多くの経営者とお会いしてきましたが、意外と経済や景気のトレンドを追えていない方が多くて、もったいないと感じることが多いです。経済の専門的な知識を身につけるというよりは、トレンドを追うのが大切だと思っています。
わかりやすく言うと、「時流に乗るために経済を知る」という感じです。
会社は、自社の努力で成長していくことが理想的ですが、何も向かい風で戦わなくても、追い風で戦う方が楽に決まっています。
例えば、これから法人税が下がっていくから法人化したほうが税効果が高くなるとか、政府の賃上げ要請で大手企業が賃上げし始めているから、うちみたいな中小には人手不足で誰も来てくれないばかりか、求人広告に大きな費用が必要になるかもしれないので、今のうちに社員を獲得しておこう、とか、規制緩和で歴史的な低金利になっているので、今のうちにお金を借りて財務を強化しておこうとか。
私は、常に戦いやすいフィールドに身をおいておくために経済の動向を気にしています。物事は、「何をやるか?」と同じぐらい「いつやるか?」というタイミングが大切です。
税金の知識
経営をすると、必ずと言って良いほど「税金」との戦いが必要になってきます。
会社の社員として働いている方でも「給料から天引きされて税金高すぎ。。。」と思うところはあると思いますが、多くの経営者はその10倍ぐらい税金のことを気にかけています。
税金の知識というと、真っ先に思い浮かぶのが「節税」という言葉です。しかし、下記の動画を見て欲しいのですが、「強い会社は節税しない」というのは実は本質のように思います。
▼(動画)10年もった会社の特徴▼
私が2013年に初めて資金調達をした際に、金融機関の担当者さんが言っていた言葉で、今でも頭に焼き付いている一言があります。それが、「税金を払ってキャッシュを残す企業は成長スピードがぜんぜん違う」という一言。節税にこだわる企業は、そっちに目線が行っちゃうんだとか。
上記の動画は税理士さん、私がお話をしたのは金融機関の担当者、どちらも数多くの経営者と接する仕事をしている人の言葉なので、間違いないと肝に命じています。
税金に関して、私が学んだこととしては、
- 黒字が出てお金を貯めようと思ったら、税金は払うものだと割り切る
- 必要最低限の節税策は行う
- どれくらいの税金が発生するか事前に把握しておく
- 税金の支払いサイクルを把握しておく
の4つです。
特に、支払うべき税金のシミュレーションと、その支払い期日を把握しておくことが大切です。キャッシュフローを意識するということですね。
あまり必要性を感じなかったもの
逆に、勉強したり資格をとってみたは良いものの、あまり必要じゃないなと感じたこともあります。
専門的な知識
技術面などの専門的な知識は、持っているに越したことはありませんが、そこまで必要はがないというのが私の意見です。
経営者は、全般的なことをまんべんなくできる、まんべんなく知っていることが重要で、専門的なことは社員やアウトソーシングして任せた方が良いです。
例えば私に関して言えば、当初は自分でサイトを作っていましたが、私はウェブデザインの専門知識は持っていません。今は利益が出せるようになったので、ウェブデザインの専門家にお願いすることが増えました。
また、プログラミングに関しても、どうしても必要だった時に必要な分だけ学びましたが、今はすっかり忘れてしまいました。
大切なのは、専門的な知識よりも、自分がやりたいことをその道の専門家に正確に伝えるための最小限の知識です。
英語
これから必要なスキルの一つに「英語」を挙げられることは多いです。私も英語をずっと勉強しています。
しかし、国内で商売をやっていく分に関しては、英語を勉強する意味はないです。将来海外で仕事をやりたいとか、外国との取引で英語が必要など、特別な理由がある場合を除いて、20年後も30年後も、英語は不要なスキルだと私は思っています。
FP(ファイナンシャル・プランナー)
FPの資格は趣味で3級を取得したのですが、何の役にも立っていません笑
というか、もうすべて忘れてしまいました。
まとめ
このように考えると、起業する前に身につけておくことは
- 必要な時に必要な知識を勉強すれば良いという適当さ
- 必要な知識を必要なだけ勉強する力
- 自分にとって何が必要かを知る能力
だと思います。
起業する前に、あの資格とこの資格が必要。。。みたいなのはないですし、本当によく聞く言葉ですが「起業の準備」とやらも不要かと。
私は26歳の時に何もやることがなくて、知識も金も実績も、あと人脈も何一つ持っていませんでしたが、12月の終わりごろに自営業になることを決めて、翌年1月5日に開業届を出しに行って、今でもやれています。(1年目は簿記の資格も持っていませんでしたし)
「実践に勝るものなし」ということで、まずやってみて、そこから足りない知識を補っていくのが良いと思います。
(書いた人:川原裕也)