2015年1月22日、ヤマト運輸では「知らないうちに信書を送ってしまうリスク」を防止する為に、3月31日にクロネコメール便が廃止されることが広報されました。
理由は「利用者の保護」の為。
信書をメール便で送ると、運送事業者だけではなく送った当人も「郵便法違反」として罰せられる可能性があります。
そもそも「信書に該当するもの」とは何でしょうか。
「パスポートはメール便OKだけど、健康保険証はNG」というように、何の知識も無いと「これは信書に該当する」とは分からず、いつの間にか郵便法違反をしている可能性もあります。
自分が送ろうとしている物が「信書」かどうか見分ける方法と、問題なく送る方法をまとめました。
信書の定義
信書とは「特定の受取人に対して、差出人の考えや思いを表現し、または現実に起こり、存在する事柄などの事実を伝える文書」のこと。
ここで言われる「文章」は、文字や記号、符号など、人の知覚(見たり、触ったりなど)で認識できる情報が記載された紙などを指します。
CDやDVD、USBメモリなどは「それを見るだけでは情報の内容が分からない」「文章ではない」という理由で信書に当てはまりません。
信書に該当する文章=基本的に郵便でしか送れない
信書の判別方法で難しいのが「個人情報を含んでいたり『進展』と書かれていたりする文章全てが信書に該当する」と言う訳ではないこと。
「特定の受取人に対して、差出人の意思を表示したり、事実を通知する紙など」が信書として扱われます。
●書状
手紙、はがきなど
※記載内容が「信書に該当しない文章」であれば、信書に該当しない。
●請求書類
納品書、領収書、積書、願書、申込書、申請書、申告書、依頼書、契約書、照会書、回答書、承諾書、レセプト(診療報酬明細書など)、推薦書、注文書、年金に関する通知書・申告書、確定申告書、給与支払報告書
●会議招集通知類
結婚式などの招待状、業務を報告する文章
●許可書類
免許証、認定書、表彰状
※カード形状の資格の認定書などを含む。
●証明書類
印鑑証明書、納税証明書、戸籍謄本、住民票の写し、健康保険証、登記簿謄本、車検証、履歴書、給与支払明細書、産業廃棄物管理票、保険証券、振込証明書、輸出証明書、健康診断結果通知書・消防設備点検表・調査報告書・検査成績票・商品の品質証明書・その他の点検・調査・検査などの結果を通知する文章
●ダイレクトメール
・文章自体に受取人が記載されている文章
・商品の購入等利用関係、契約関係等特定の受取人に差し出す趣旨が明らかな文言が記載されている文章
例えば宅配便やメール便を使って以下のことはできません。
●「バレンタインデーに、好きなキャラクター宛にチョコレートと一緒にファンレターを同封する」
→手紙が信書に該当。
●「実家から離れて暮らす子ども宛に、食料品と『必要だ』と言われていた戸籍謄本、住民票の写しを送る」
→戸籍謄本、住民票の写しが信書に該当。
※ただし許可や証明を受けて、許可証や証明書を受け取り、原本やコピーを他所へ送る場合は大丈夫です。
例「契約書の写しを支店から本社法務担当部署に送る」「旅行会社が旅行申込書の控えを、申し込んだ顧客に送る」「納品伝票の写しを納品業者に返送する」など。
●「就職活動で、希望企業宛にメール便で履歴書を送る」
→履歴書が特定の受取人(=企業)に事実を通知する文章なので信書に該当。
ただし企業選考後、履歴書を応募者に返送する場合は「企業からの情報を通知する文章」に当てはまらない為、信書には該当しません。
●「会社内での他部署宛の文章を送る」
→差し出す部署からの意思を表示、事実を通知する文章であれば、信書に該当します。
●「会員限定のセールやイベント、セミナーの開催案内を会員に送る」
→Webサイトや新聞などに掲載した内容と同じでも、特定人の受取人に対して差出人の意思を表示したり、事実を通知するダイレクトメールは信書に該当します。
【引用と参照。もっと詳しく知りたい人へ】
信書に該当しない文章=郵便以外でも送れる
信書に該当しない文章は以下の通り。
「自分が送りたい物が信書かどうか判断できない」という場合は、総合通信局や総務省へ問い合わせして下さい。
●書籍類
新聞、雑誌、会報、会誌、手帳、カレンダー、ポスター、講習会配付資料、作文、研究論文、卒業論文、裁判記録、図面、設計図書
●カタログ
通信販売のカタログなど
●小切手類
手形、株券、為替証書
●プリペイドカード類
商品券、図書券、プリントアウトした電子チケット
●乗車券類
航空券、定期券、入場券
●クレジットカード類
キャッシュカード、ローンカード
●会員カード類
入会証、ポイントカード、マイレージカード
●ダイレクトメール
・街頭配布や新聞折り込みを前提として作成されるチラシのようなもの
・店頭配布を前提として作成されるパンフレットやリーフレットのようなもの
●その他
説明書類(市販の食品・医薬品・家庭用または事業用の機器・ソフトウェアなどの取扱説明書・解説書・仕様書、定款、約款、目論見書)、求人票、配送伝票、名刺、パスポート、振込用紙、出勤簿、ナンバープレート
ちなみに「現金」に関しては、現金書留以外の方法で送るのは違法です。
現金書留の封筒に現金を入れて、郵便窓口で取り扱ってもらいます。
信書を送る方法
信書を送れるのは日本郵便と信書便事業者だけ。
特定信書便事業者は2014年10月31日現在で431者あります。信書便事業者一覧(平成26年10月31日現在) - 総務省
全国各地で利用しやすいのは「佐川急便」と「西濃運輸」あたりでしょうか。
信書便事業者は送付可能な信書が「長さ、幅、厚さの3辺の合計が90cm以上または重さが4kg以上」、「送付先から3時間以内に届く」、「料金額が1,000円以上」に限定されています。
「最も安く信書を送りたい」という場合は、日本郵便を利用するのが適切です。
日本郵便
- 定形、定形外郵便
- レターパック
- EMS(国際郵便)
【定形、定形外郵便】
信書のサイズが小さく、重さも軽ければ「郵便(定形、定形外)」が一番安く送れます。
●定形郵便
最大サイズ(長さ23.5cm、幅12cm、厚さが1cm)。重さは50g以内
料金は25g以内82円、50g以内92円。
●定形外郵便
最大サイズ(長さ60cm。長さ、幅、厚さの合計が90cm)。重さは4kg以内
50g以内 120円、100g以内140円、150g以内205円、250g以内250円、500g以内400円、1kg以内600円、2kg以内870円、4kg以内1,180円
【レターパック】
レターパックは全国一律料金で信書など送れます。
ポスト投函が可能。追跡サービスも利用できます。
●レターパックプラス
郵便受けに入れず、対面での手渡しになります。
料金は全国一律510円。サイズはA4サイズ、重さ4kg以内ならば、厚さが3cm以上でもOK。
●レターパックライト
郵便受けにお届け(入らない場合は手渡し)。
料金は全国一律360円。サイズはA4サイズ、重さ4kg以内、厚さが3cm以内が条件。
【EMS(国際郵便)】
世界120以上の国や地域に30kgまでの信書を含む書類や荷持を送れる国際郵便です。
佐川急便
佐川急便で信書を送れるのは「飛脚特定信書便」だけ。
個人と法人の両方で利用可能。航空機の利用で、北海道から沖縄まで即日宅配もできます。
初めて飛脚特定信書便を使う場合は、初期登録が必要なので、事前に担当営業所やセールスドライバーと打ち合わせを行ないます。
【サービスエリア】
全国
【取り扱いサイズ】
飛脚特定信書便(1号)……長さ、幅、厚さの3辺の合計が90cm以上160cm以内、または4kg以上30kg以内
飛脚特定信書便(3号)……長さ、幅、厚さの3辺の合計が160cm以内、重量30kg以内。
【料金】
一通当たり1,000円~3,000円。
サイズやお届け先、飛脚特定信書ジャストタイム便の利用の有無によって異なります。
詳しくは「飛脚特定信書便 料金表(PDFファイル)」を参照して下さい。
西濃運輸
西農運輸のカンガルー信書便は「長さ、幅、厚さの3辺の合計が90cm以上、または4kg以上」の信書が送れるサービスです。
法人向けのサービスで、個人は利用できません。
信書が送れない方法
「信書は郵便で送れる」と勘違いする人は少なくありませんが、郵便サービスでも信書が送れない方法もあります。
私が以前ゆうパックでチョコレートと手紙を送ろうと、品名に「チョコレート、手紙」と書いた所、郵便局窓口で「手紙は同封できないんですよ」と断られたことがあります。
もし以下の方法で信書を送った場合、送った自分と運送事業者が「郵便法違反」に問われる可能性があり、実際にヤマト運輸のメール便で信書を送った結果、書類送検や事情聴取になったケースが複数あります。
【日本郵便】
- ゆうパック
- ゆうメール
- ポスパケット
【佐川急便】
- 飛脚宅配便
- 飛脚即日宅配便
- 飛脚メール便
- 飛脚ゆうメール便
【ヤマト運輸】
- 宅急便
- クロネコメール便(3月31日で廃止。4月1日からクロネコDM便に変更)
- 国際宅急便
- クロネコ国際メール便
いかがでしたか?
実は信書の定義は非常に曖昧で、総合通信局や総務省へ問い合わせをしても「信書がどうか即答できない」という事例も多くなっています。
「これ、メール便や宅配便で送っても大丈夫かな?」と思った時は、まず信書に当てはまるかどうか確認しましょう。
信書に該当しそうな文章は、郵便やレターパックで送り、他の荷物と一緒に宅配便やメール便で送らない方が安全性が高いと言えます。
(書いた人:昼時かをる)
▼ 他にもこんな記事書いています ▼