あなたは普段、どれだけの募金や寄附をしていますか?
実は年間2,000円以上の寄附など条件を満たしていれば「寄附金控除」の対象になり、所得税や個人住民税が安くなります。
相続した財産を寄附すれば、寄付金相当額に対する相続税が非課税になるので、相続税対策にも利用可能。
寄附した金額が大きければ大きいほど、得られるメリットも大きくなります。
「寄附はしていたけど寄附金控除の存在を知らなかった」「何となく損した気分になるから、今まで寄附をしてこなかった」という人は、是非とも利用を検討してみてはいかがでしょうか。
控除を受けるには「領収書」と「確定申告」が必要
「寄附をすれば自動的に節税になる」という訳ではなく、寄附金控除を受ける為には、寄附したことを証明する「領収書」と毎年2~3月にある「確定申告」が必要です。
何の気なしに街頭募金で寄附する場合、領収書をもらえなければ寄附金控除の対象にはなりません。
ただし街頭募金でも後日領収書をもらえる場合もあるので、2,000円以上のまとまった寄附を行なう時は「寄附をすると、税制上の優遇措置が受けられるか?」「領収書の発行は後日でも行なっているか?」など質問してみると良いと思います。
確定申告の際は、以下の書類を事前に用意しておく必要があります。
・確定申告書(税務署または国税庁のWebサイトで入手)
・勤め先の源泉徴収票
・寄附した団体から届く領収書の写し
・特別控除の団体であることを証明する書類※
など
※寄付先が地方独立行政法人、学校法人、特例民法法人、特定公益信託の場合。
確定申告書に「所得から差し引かれる金額 寄付金控除」の欄があるので、上記で計算した控除金額を記入します。
確定申告の期間は毎年「翌年の2月16日から3月15日まで」の1ヶ月限定なので、準備や提出のし忘れに注意です。
詳しい確定申告の手続き方法に関しては「平成26年度分 確定申告特集 - 国税庁」を参照下さい。
控除額はいくらになる?
国や地方公共団体、特定公益増進法人などに特定寄附金を行なうと、所得金額から寄附金控除の金額が引かれます。
認定NPOや公益社団法人、政治活動に関する寄付金に対する寄付金の場合は、寄附金控除または寄付金特別控除(税額控除)のどちらか有利な方を選べます。
また自分が住んでいる自治体が、寄附先を「寄付の税制優遇の対象団体」に指定している場合、個人住民税の控除も合わせて受けられます。「所得税及び復興特別所得税の確定申告」または「住所地の市区町村へ申告書による簡単な申告」を行ないます。
では実際に「2,000円以上寄附すると、税が安くなる」とは言っても、どれだけの控除額になるのでしょうか。
所得控除
寄附金の控除額は「その年に支出した特定寄附金の額の合計額」または「その年の総所得金額等の40%相当額」のどちらか低い金額から2,000円を引いた金額です。
【計算式】
その年に支出した特定寄附金の額の合計額-2,000円
その年の総所得金額等の40%相当額-2,000円
総所得金額とは、以下の金額(損益通算後)の合計額のこと。
1.利子所得
2.配当所得
3.不動産所得
4.事業所得
5.給与所得
6.総合課税の短期譲渡所得
7.雑所得の金額の合計額
8.総合課税の長期譲渡所得の金額×1/2相当額
9.一時所得の金額の合計額×1/2相当額
総所得金額等は、総所得金額に退職所得金と山林所得金額を足した金額を指します。
自分の収入が給与収入だけの場合、総所得金額は「給与所得控除後の金額」になります。
給与所得控除後の金額は、給与所得の源泉徴収票に記載されています。収入金額(支払金額、年収)から給与所得の金額を引いたものです。
例えば基本給が18万円&ボーナス無しの場合……
収入金額は216万円(=18万円×12ヶ月)。給与所得控除額は169.2万円(=216万円×30%+18万円)。
給与所得控除後の金額・総所得金額は46.8万円(=216万円-169.2万円)。
よって寄附金の控除額は15万8,800円(=26.8万円×40%-2,000円)。
実際に年間10万円の寄附をした場合の金額は「その年の総所得金額等の40%相当額-2,000円」よりも低いので、寄附金の控除額は9万8,000円になります。
参照:
No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除) - 国税庁
No.1410 給与所得控除
↑給与所得控除は給与などの収入金額によって計算方法が異なります。
税額控除
寄附先により税額控除の金額の割合が異なります。
それぞれ100円未満の端数は切り捨てです。
【認定NPO法人など】
(その年中に支出した認定NPO法人等に対する寄附金の額の合計額-2,000円)×40%
【公益社団法人など】
(その年中に支出した公益社団法人等に対する寄附金《一定の要件を満たすもの》の額の合計額-2,000円)×40%
【政党など】
(その年中に支出した政党等に対する寄附金の額の合計額-2,000円)×30%
寄附先はどこが良い?
寄附金税額控除の対象になるのは、以下の寄附先です。
・都道府県や市区町村に対する寄附金(ふるさと納税)
・住所地の都道府県共同募金会に対する寄附金
・住所地の日本赤十字社支部に対する寄附金
・都道府県や市区町村が条例で指定する寄附金
「キーワード 寄附」で検索した際、表示されたページに「税制上の優遇措置が受けられる」など記載があれば間違いありません。
ふるさと納税
ふるさと納税は「都道府県や市区町村に対する寄附金」なので、所得税や個人住民税の控除が受けられます。
2015年度から大幅に内容が改正。2,000円を除いた全額が控除される限度額(ふるさと納税枠)が約2倍に増えたり、確定申告が不要※になったりしたことで、より多くの利用が予想されています。
過去記事:実質2,000円の寄付で特産品プレゼント+節税対策!人気急上昇のふるさと納税を利用する3つのメリットでも書きましたが、ふるさと納税をすると各自治体の特産品がもらえる特典もあるので、最も手間なく得られるうま味が大きい寄附先だと思います。
※医療費控除が無いなど、元々確定申告が不要な場合。
1年間に5つまでの自治体への寄附であれば、各自治体宛に直接申請書を送るだけでOK。
被災地への義援金
東日本大震災に関する義援金は「ふるさと納税」扱いで、翌年度の個人住民税が控除になるだけではなく、一般の寄附金控除よりも大きな控除が受けられるのがメリットです。
【一般的な寄附金控除】
寄付金額(総所得金額などの40%が限度)-2,000円
【東日本大震災への義援金】
寄付金額(総所得金額などの80%が限度)-2,000円
その他
他にも図書館や美術館、博物館、自分の出身校、研究施設、NPO団体など、自分が「今後の活動を支援したい」と思うような団体に寄附するのも良いですね。
実際に私は出身大学に「学生奨学金制度と学生生活活動の支援」という名目で寄附したことがあります。
最近はクレジットカードやネット銀行で寄附できる寄附サイトも色々あるので「寄附先がどこが良いか迷う」という場合の参考になると思います。
いかがでしたか?
「日本は欧米諸国と比較して寄附文化が根付かない」と言われます。
・「お金を出すのは国や自治体」という意識が強い。
・自国で震災が起こっても、当事者意識が低い。
・使用された用途が分かりにくく、達成感を味わいにくい。
・「売名行為」「偽善」と叩かれる。
など、理由はいくつか挙げられますが「節税対策になることを知らない人が多い」「控除対象になる団体が少ない」「控除を受ける為の手続きが面倒」というのも大きいのでは無いかと思います。
ここ数年の間で、世間一般的に寄附の必要性が高まり始めているように感じます。
ふるさと納税や東日本大震災への義援金に関する法改正が行なわれたのは良い例です。
今後、更に税制度や人々の意識が変わることで、多くの人が抵抗感なく寄附できる未来もそう遠い話では無いような気がします。
(書いた人:昼時かをる)
▼ 他にもこんな記事書いています ▼