4月末に起こった大地震で、世界からネパールへの注目度が集まっています。
……とは言っても、私たち日本人からしてみれば「ネパール=エベレストとネパール料理、ヒンドゥー教の国」というぼんやりしたイメージしかなく、日本からの直行便も無いので「意外と行かず、知らない国」という人は多いのではないでしょうか。
実は日本とネパールは、昔から何かと縁がある国です。過去から現在にかけて繋がる、日本とネパールの関係性を見ていきたいと思います。
日本とネパールの関係性
ネパールを始めて訪れた日本人僧侶
"Ekai Kawaguchi by Zaida Ben-Yusuf, c1899" by Zaida Ben-Yusuf - Philadelphia Museum of Art. Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.
黄檗宗の僧侶、河口慧海(かわぐちかえい)が、梵語・チベット語の仏典を求める為、当時鎖国状態にあったチベットへ向かう際、途中でネパールにも訪れています。
1899年2月にネパールの首都カトマンズに到着。ネパールでは梵語仏典や仏像の蒐集、仏書を寄贈などを行なっていました。
ネパール北部にあるマルパでは、河口慧海が3ヶ月間滞在した家が「河口慧海記念館」として一般公開されています。
▲河口慧海記念館
ネパールやチベットでの出来事は『チベット旅行記』にまとめられており、青空文庫にて無料で読むことができます。
ネパール最初の留学先は日本
1902年、ネパール国王派遣により8人のネパール人が日本へ来訪して、兵学、鉱物学、工学、窯業、農業などを学びました。
当時アジアを含めて世界中の国々では、近代化を学ぶ為に西側諸国が留学先に選ばれていました。
なぜネパールが日本を留学先に選んだのかというと「仏教国」「カーストに影響を与えない」「質の高い技術学校が多くある」という理由から。
現在も日本は留学先として人気が高く、日本に滞在するネパール人の3人に1人が留学生です。
【留学先上位5カ国】(2013年度)
1位:オーストラリア(26.7%)
2位:日本(25.9%)
3位:インド(7.3%)
4位:マレーシア(5.0%)
5位:アメリカ(4.9%)
東日本地震や領土問題から、中国や韓国の留学生が激減した一方で、ネパールやベトナムからの留学生が急増しています。
日本人学校が東南アジアや南アジアへ「営業先」を変えたり、留学ビザが取得しやすい国だったりすることが、理由として挙げられています。
視聴率80%の『おしん』
1992年にネパールで初めて放映された国際ドラマは、NHK連続テレビ小説『おしん』。
おしんが置かれていた境遇や生活の様子が、ネパールの人々と共通する部分が多かったこともあり、大変な人気作品になりました。
最高視聴率は80.9%。日本の最高視聴率は62.9%と、歴代6位の記録ですが、それをはるかに上回るほど。
首都カトマンズのカリマティ地区には「おしん言語研究所」という、日本語学校もあります。
富士山とエベレストは姉妹山
"Mt Fuji at Nihondaira". Licensed under CC 表示 3.0 via Wikipedia.
"Everest North Face toward Base Camp Tibet Luca Galuzzi 2006" by I, Luca Galuzzi. Licensed under CC 表示-継承 2.5 via ウィキメディア・コモンズ.
2014年6月、日本最高峰の富士山(3,776m)と世界最高峰のエベレスト(8,848m)が姉妹山の提携を結びました。
富士山が世界自然遺産に登録されたことを機会として、環境保全などの共通の課題を協力して取り組むことを目的にしています。
元々、富士山はレーニア山(アメリカ合衆国)とナウルホエ山(ニュージーランド)の姉妹山になっていますが、エベレストが姉妹山の協定を結ぶのは初めてのことです。
ネパールの主要援助国の一つ
ネパールは多くの観光客・登山客が訪れる国ですが、アジアの最貧国の一つでもあります。
1995年に起きた政治闘争や政治的混乱により、現在も政治・社会的に不安定な状態にあり、各国はネパールに対して支援を行なっています。
日本との関係は良好で、1956年に日本とネパールの外交関係が樹立しており、積極的な経済支援も行なっています。
【ネパールの主要援助国】(2012/2013年度)
1位:イギリス
2位:アメリカ
3位:日本
4位:インド
5位:スイス
【日本の累計援助実績】(2012年度または2013年度まで)
有償資金協力……790.03億円
無償資金協力……1,974.24億円
技術協力実績……636.68億円
もちろん資金援助だけではなく、貿易も行なわれています。
日本への輸出の主要品目は「既製服、紙製品、カーペット・繊維」と紙・布製品、輸入は「鉄鋼関連品、機械・工業製品、車関連部品」と工業製品が上位に来ています。
日ネ貿易に関しては、ネパールから日本への輸出額が圧倒的に少なく、貿易赤字(輸入額が輸出額を上回っていること)が起こっています。
今回、ネパールで起きた大地震を受けて、日本政府は16億円の緊急無償支援協力を実施することを決定しています。
参照:ネパール連邦民主共和国(Federal Democratic Republic of Nepal)基礎データ - 外務省
インド料理と似て非なるネパール料理
"Dalbath" by ja:User:松岡明芳 - ja:画像:ダルバート(ネパール)ダンプス(ホテルムーンライト).jpg. Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.
ネパールの食文化は、土地柄インド料理と中華料理、チベット料理を組み合わせたような料理が特徴的です。
主食として良く食べられるのは、ご飯とカレー(タルカリ)と、カレー味のおかず(タルカリ)、漬物(アツァール)を金属のお盆に乗せた「ダルバート」です。
ネパール料理店でタルカリセットやダルバートセットとメニューに記載されていたら「タルカリセット=カレーがメインのセット」、「ダルバートセット=カレーとおかずと漬物のネパール定食セット」と考えておくと分かりやすいです。
インド料理に近い食べ物も多いことから、日本の飲食店だと「インド&ネパール料理店」と両方の国名が明記されていたり、インド料理店のシェフがネパール人だったりすることが多々あります。
モモ(蒸し餃子)、茶(チベットティー、バター茶)、チョウメン(焼きそば)など、インド料理にはないテイストの食べ物も多いので、ちょっと変わったものが食べたい時はネパール料理店へ足を運んでみるのも良いかもしれません。
(書いた人:昼時かをる)
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