近年、企業の社会的責任(CSR)という言葉を良く聞くようになりました。
企業の社会的責任(CSR)とは、企業が利益だけを優先するのではなく、ステークホルダー(利害関係者。消費者や従業員、仕入先、株主など)を重視しながら社会貢献すること。
社会貢献活動には「社外的取り組み」と「社内的取り組み」の2つに分けられます。
【社外的取り組み】
- 事業所が立地する地域を中心とした活動
- 本業の専門性に関連した活動
- 他機関(NPO、地縁組織、大学、行政など)と連携した活動
【社内的取り組み】
- ボランティア活動を通した社員研修
- 従業員の取組支援、各種制度(ボランティア休暇、表彰制度)の整備
- CSR・社会貢献活動推進担当組織体制の整備
参照:企業の社会貢献活動事例集 企業市民としての役割を探る(PDFファイル)
私たちが企業の社会貢献活動としてイメージしやすいのは、前者の「社外的取り組み」だと思います。
社会貢献活動に取り組む企業として、今回紹介したいのが株式会社ワコール(WACOAL)です。
特に女性には馴染みが深い、女性用下着で有名な衣料品メーカーですが、ピンクリボン活動を含めた「女性支援活動」や、大学との共同プロジェクト(産学連携)も積極的に行なっています。
女性の身体にとっても身近な企業だからこその社会貢献活動について、詳しく見ていきたいと思います。
ブレストケア活動
ワコールは乳がんのビフォーケア(啓発・検診)・アフターケア(術後のサポート)を支援する「ブレストケア活動」を推進しています。
ピンクリボン活動
ワコールは乳がんにかかわる活動を通じて、女性の「美しくありたい」という気持ちを応援! | ピンクリボン活動 | ワコール
ワコールは「ピンクリボン活動」に賛同し、乳がんの早期発見・診断の啓発活動を行なっています。
10月のピンクリボン月間中、ワコールでは2つの募金キャンペーンを展開しています。
【フィッティングキャンペーン】
全国約2,000店舗のワコールグループの下着売り場で、ブラジャーを1枚試着ごとに10円が、公益財団法人日本対がん協会「乳がんをなくすほほえみ基金」に寄付されます。
【ピンクリボン検定】
気軽に乳がんの知識がクイズで学べる「ピンクリボン検定」。期間中、受験1回ごとに3円が認定NPO法人「乳房健康研究会」に寄付されます。
乳がん検診サポート事業
医療法人プラタナス「イーク丸の内」と共同で、乳がん検診車AIOを利用した乳がん検診を実施。
検査の為、病院まで出掛ける必要がなく、マンモグラフィと超音波診断機エコーの2種類の検査を気軽に受けられます。
対象になるのは「乳がん集団検査を検討中の企業や健保など」と「ピンクリボンイベントなどによる乳がん集団検診を検討の企画元」。
私たちが乳がん検診車AIOで検査を受けようと思うと「対応する企業などに勤めている」または「ピンクリボンのイベントに参加する」必要があります。
乳がん経験者の為の下着「リマンマ事業」
ワコールブランドの一つ、リマンマには「乳房をふたたび」「美しさをもう一度」という意味があり、乳がんを経験した人向けのブラジャー、ボディースーツ、ランジェリー、パッド、水着を取り扱っています。
リマンマシリーズの商品は、店頭で見かける機会がほとんど無く、全国6ヶ所(札幌、東京、名古屋、京都、大阪)にあるリマンマルームや各地の相談会、通販カタログ、ワコールウェブストアで購入ができます。
不要なブラジャーを回収「ブラ・リサイクル」
ワコールのある調査で、多くの人が「ブラジャーを捨てることに躊躇することがある」と回答したことを切っ掛けに、不用になったブラジャーを回収して、再生燃料に加工する「ワコール ブラ・リサイクル」が2008年に全国でスタートしました。
例年は2月12月(ブラの日)から4月22日(アースディ)の約2ヶ月間でしたが「年末の大掃除や新生活の準備など、衣類を整理する時期に合わせて欲しい」という要望を受けて、今年は2015年11月1日(日)から2016年3月31日(木)までの5ヶ月間に延長されました。
全国の百貨店、下着専門店、ワコール直営店およびグループ会社を中心に合計約800店舗で実施。
参加方法は、実施店舗で「ブラ・リサイクルバッグ」をもらった後、ワコール問わずのブラジャーをリサイクルバッグ(1袋に約6枚のブラジャーが入ります)に入れて封をして、店舗のスタッフに渡すだけ。回収袋1袋ごとに1枚のオリジナル切手がもらえます。
再生工場でも袋に入ったまま裁断される為、最後の最後まで絶対に開封されず、安心してブラ・リサイクルキャンペーンに参加できるのも良いですね。
ワコール ツボミスクール
ツボミスクールは、小学校4年生から中学校2年生までの女の子と保護者を対象に行なわれる下着教室です。
関東と関西圏を中心に開催されており、子どもたちや保護者が楽しみながら下着や身体の基礎知識を学べる機会を提供してくれます。
学校での授業の他、家庭教育学級や学校保健委員会、養護教諭部会、子ども会やガールスカウトなどでも開催されています。
私の小学生・中学生時代を思い返すと、生理や二次性徴に関する授業はあっても「自分の体型にあった下着の選び方」や「サイズの測り方」などに関しては、ほとんどノータッチでした。
この時期は「自分に合ったサイズが何か分からない」「ブラジャーを着けるのが恥ずかしい」「胸が大きくなるのが嫌だ」と思った覚えがあるので、私の時代にもツボミスクールがあれば、すごく助かっただろうなと思います。
産学連携プロジェクト「ワコールワークショップ」
産学連携(さんがくれんけい)とは「大学などの教育・研究機関と民間企業が、研究開発や新事業の創出を目的として連携すること」。
ワコールでは、価値観や社会情勢を予測した上で「新規性」を追求し、必要な知識や見定める力を養うことを目的とした産学提携プロジェクトを行なっています。
【精華大学「ときめき×未来」】
デザイン学部プロダクトデザイン学科の学生が、株式会社ウンナナクールのスタッフと共に「次世代のインナーウェアデザイン」を考察するプロジェクトを実施。
実際のビジネスに近い形で、主軸となるモノの提案から、総合的なプロモーション展開までの企画に取り組みます。
実際にウンナナクール✕京都精華大学のコラボ商品として商品化されたランジェリーもあります。てぬぐインナー(2015年)、バラのブラ(2012年)。
【女子美術大学「魅せる」】
芸術学部アート・デザイン表現学科ファッションテキスタイル表現領域と連携。
ワコールのデザイナー経験者が講師を務め、ランジェリーの歴史や素材に関する講義や、立体裁断・パターン縫製、作品のプレゼンテーションを指導。
学生は3年生後期・4年生前期の約1年間のカリキュラムで、キーワードからコンセプトを考察・提示して、企画、製作、展示を行ないます。
ワコールは学生ならではの独創的なアイディアに触れることができ、ワコールが持つノウハウを伝えることで、人材の育成に繋げるという意図があります。
【ノートルダム女学院】
中学校みらい科3年生を対象に「働くことを体験する」をテーマに、協調性、論理性、プレゼンテーションを学ぶことを目的とした社会実習授業を実施。
ワコール広報・宣伝部に配属する設定で、ティーン向けブラジャーを題材に、広告・宣伝などのコミュニケーションをチームで学びます。
【聖心女子大学】
機能性ボトムインナー「ふとももウォーカー」を題材に、商品プロモーションを企画するワークショップを実施。
大学2年生から大学院生までの29名がワコールに入社した設定で、商品プロモーション活動や広告、宣伝などのコミュニケーションをチームで学ぶプログラムになっています。
いかがでしたか?
今月10月はピンクリボン月間というのもあり、乳がんの早期発見・診断の啓発活動に積極的な姿勢をみせる「ワコール」の社会貢献活動について取り上げてみました。
女性であれば、ほぼ一生涯に渡って利用する「インナーウェア」。
それを開発・製造・販売する衣料メーカーだからこそ行なえる社会貢献活動は「色々な活動に積極的に取り組んでいるから好感度が高い」「私もピンクリボン活動を支援しているから、ワコールのブラジャーを買おう」など、企業価値や利益の向上にも繋がるのだと思います。
ちなみに東洋経済が発表した2014年度の「CSR企業ランキング」でTop10に入った企業は以下の通り。
1位:NTTドコモ
2位:富士フィルムホールディングス
3位:日産自動車
4位:キャノン
5位:トヨタ自動車
6位:ブリヂストン
7位:JT
8位:冨士ゼロックス
9位:アイシン精機
10位:東芝
「いつも商品を買ったり、サービスを利用している、あの企業は一体どのような社会貢献活動をやっているのだろう?」と調べてみるのも面白いかもしれませんね。
(書いた人:昼時かをる)