「パソコン1台で時間や場所にとらわれず、いつでもどこでも仕事ができる」ことをノマドの魅力として感じる人は多いのですが、では実際に使用するパソコンは、どのようなものが最も適切なのでしょうか?
弊社クートンでは、業務用パソコンとして今年の春にGoogleのOSを搭載したChromebookを導入しました。
上記記事内では「社員(=私)が主に自宅で作業するパソコンとして導入」とあるのですが、現在は在宅だけでなく、ノマドでも活用しています。
Chromebookは一般的に「安価で軽くて早く、セキュリティも安心だが、利用可能なソフトに制限がある」という印象がありますが「ノマドで使う」場合のメリット・デメリットはどのような所にあるのでしょうか?
Chromebookを使い倒して半年以上経ったので、私の実体験に基いた意見を述べていこうと思います。
今、ノマドワークを実施している人だけではなく「外で使う用に新しくノートパソコンを購入予定だけど、最近良く聞くChromebookって実際どうなの?」と思っている人のお役に立てれば幸いです。
Chromebookをノマドで使うメリットデメリット
うっかり壊してもショックを受けにくい「2~3万円台」価格
Chromebookを利用する大きなメリットの一つに2~3万円で買えるが挙げられます。
何かと持ち運びが多いノマドワークで「落として壊す」「どこかに置き忘れて紛失する」などのトラブルが起きたとしても、2~3万円の損失で済みます。
Chromebookはデータをクラウドサービス(GoogleドライブやDropboxなど)に保存して利用するので、仮にChromebookが一切動かなくなっても、別のパソコンやスマートフォンから、クラウドサービスにアクセスすれば、データは無事です。
ちなみに私が学生時代に購入したノートパソコン(東芝のDynabook)の値段は約10万円。
数ヶ月は使えていたのですが、取扱いの乱雑さからか液晶部分が壊れてしまい、修理代が4~5万円近くした(修理済みのパソコンは友人に修理代価格で譲りました)ことを考えると「あの時代にChromebookがあれば良かったのに……」と思います。
軽いので気軽に持ち運べる
ノマドワークで使用するノートパソコンの重さは1kg~1.5kgが目安と言われます。
あまりに荷物が重いと、持って歩くだけで大変で、作業に入るまでに疲れてしまいますよね。
作業する為にはパソコン以外にも必要なものがありますが、それらは軽量化しようと思えばある程度は軽くできます。
一方、パソコン自体の重さは変えられないので、同等のスペックであれば、なるべく軽いものを選びたい所です。
各メーカーのChromebookのインチに対する重さの平均は以下の通りです。
- 11.6インチ:1.1~1.3kg
- 13インチ前後:1.4~1.5kg
- 14インチ:1.7~1.8kg
Chromebookに限りませんが、インチ数が大きければ大きいほど、重さも増します。
私が使用しているChromebook(Acer C720)は、11.6インチで1.25kg。
モバイルWi-Fi、マウス、充電ケーブルなど、ノマドに必要なアイテム加算すると総重量は約1.5kg。
「ちょっと重いけど、持ち運びで疲れる程ではない」くらいの重さなので、特に問題なくノマドワークで使えていますが、もり仮に画面の大きさを優先して、14インチのChromebookを選んでいたら「ノマドしたくない」と思ったかもしれません。
軽い代わりに画面が狭い
Chromebookの平均的な画面サイズは11.6~14インチ。
現時点で最大サイズはAcer Chromebook15の15.6インチですが、15インチ以上のChromebookは、ほとんど発売されていません。
ノート1冊分の大きさなので、持ち運びに便利なのですが、デスクトップのモニタ画面に慣れていると、やはり「狭さ」を感じます。
例えば「画面右側に必要な情報を出して、左側で文章を書く」という場面では、元々狭い画面を更に半分にして使用する必要がある為、作業をしながら「サブ画面が欲しい」と思うことが多々あります。
「持ち運びの利便性と快適に作業できる画面サイズ、どちらを優先させるのか?」でも、選ぶChromebookは変わってくるように思います。
起動と動作はめちゃくちゃ早い
Chromebookはパソコン本体で実行すべき作業がほとんどないので、電源スイッチを押してから、ログイン画面が表示されるまでの時間が非常に短いです。
Chromebook全体の平均は約8秒。待ち時間がほとんど無く、すぐに作業を開始できるのは、スピーディーさが求められるノマドワークとの相性も良いです。
Acer C720だと、7秒以内、スリープ状態であれば1秒で起動してくれます。
もちろんシャットダウンも早いので「あれ?間違ってスリープモードでも押した?」と思うくらいです。
データの保存は全てクラウドサービスを利用していることもあり、良くあるデータが蓄積され過ぎてパソコンが重くなることも起こりません。
実際にChromebookを購入して半年以上経っていますが、開始当初と変わらない動作スピードを保っています。
バッテリーの持ちは4~13時間とピンキリ。途中充電が必要
機種によってバッテリーの持続時間が大きく異なりますが、Chromebookは最短で4時間、最長で13時間持ちます。
私の基本の勤務形態は9~18時(1時間休憩)なので、9時間以上パソコンを起動させた状態を続ける必要があります。
使用しているChromebook(Acer C720)は公式サイトの情報によると「バッテリーの持続時間は最長8.5時間」とありますが、実際には作業していると、フル充電でも6時間くらいしか持ちません。
例えば「午前中はカフェでノマド。午後は自宅のデスクトップパソコンで作業」など、Chromebookを3~4時間程度しか使わない場合は「パソコン、モバイルWi-Fi、マウス」で充分。
ただし1日中外で作業しようと思うと、かなり心許ないので、上記アイテムに加えてモバイルバッテリーや充電ケーブルは必要不可欠です。
一般的なソフトウェアが全く使えず、できる作業が制限される
Chromebookはソフトウェアをインストールして使用するタイプのパソコンではなく、作業に必要な機能があればChromeウェブストアでChromeアプリや拡張機能を探してインストールして使うという使い方をします。
いわゆるプリインストールのソフトウェアがほとんど無いとも言えます。
「将来的に全く使わない」と思うようなソフトが一切無いので、まっさらな状態から始められるのがメリットですが、Microsoft Office(WordやExcel、PowerPointなど)や、Chrome以外のブラウザ、Adobe製品(PhotoshopやIllustrator)など、一般的なソフトウェアが使えません。
ちなみにSkypeとLINEに関してはChromebookでも使う方法があります。
Microsoft OfficeはGoogleドライブに互換機能がある代替サービスやOfficeオンライン、Adobe製品は代用アプリを使用すれば良いのですが、やはりどうしても使い勝手は元のソフトより劣ります。「イチから新しいソフトの操作方法を覚える」というのも、なかなかしんどいものがあります。
各Webサービスであれば、どのパソコンを使っても同じ画面で同じ操作が行なえますが「パソコンにインストールして使うソフトウェアを利用したい」という場合は、Chromebook以外のノートパソコンを利用するしかありません。
GoogleのOSが入っているだけあり、使用可能なソフトウエアに制限がかなりありますが「パソコンは調べ物をしたり、YouTubeやニコニコで動画を見たりしか使わない」という人であれば、充分なスペックなように思います。
では重要な「ノマドワークに使えるか?」に関しては、利用を限定して使う分には使いやすいと言えます。
FTPはかなり貧弱
Web関係に携わっている人であれば、Webサイトに必要なHTMLソースや画像を、パソコンからWebサーバにアップロードする為にFTPの利用は必要不可欠ですが、Chromebookで使えるFTPはChromeアプリにあるものに限られています。
【代表的なChromeアプリのFTP】
- sFTP Client
- SFTP File System
- Shift Edit
- Free FTP
その為、ChromebookでFTPクライアントソフトとして良く使用されているFFFTPやFilezillaなどが一切使えません。
普段使っているFTPがChromebookで使えず、ChromeアプリのFTPは「有料」「日本語に対応していない」「利用方法を調べても良く分からない」などの欠点がある為、かなり使いにくさを感じます。
実際に私の管理サイトで、FTPを使わないとWebページに画像がアップロードできないサイトがあるのですが、そのサイトの作業をしようと思うとかなり滞ります……。
WordPressやはてなブログだと、FTPを使わずに画像を直接アップロードできるので「ChromebookでFTPを使わなくても特に問題が無い」というのであれば利用価値はあります。
Chromeアプリは次々と新しいサービスが登場しているので、使い勝手の良いFTPが出ることを願います。
「文章を書くこと」に集中できる
「写真の加工やイラスト作成が行なえない」「FTPで画像をアップロードできない」「画面が狭いので、同時進行の作業が難しい」を、良いように考えてみると文章を書くことに集中できるとも言えます。
私の職種がWebライターなので、特に「強制的に書くことに集中できる環境が整う」というのは良いです。
大画面モニタや2画面のデュアルディスプレイだと「左画面でニコニコ動画を見ながら、右画面で作業をする」も簡単にできてしまうので、時と場合によっては、かなり厄介な存在です。
「今日中にレポートを提出すべきだが、別のことに気を取られて執筆作業が滞っている」「画像作成に時間をかけ過ぎて、本来の書くことを疎かにしがち」という時、Chromebookでの執筆作業は思った以上に捗ります。
デスクトップ用のキーボードとは違う打ち心地が微妙に気になるかもしれませんが、ある程度大きさのあるChromebookであれば、タイピングスピードが格段に下がることは無いように思います。
ノマドワーカーにとって最適なパソコンとは?
ノマドで使うパソコンは、よほどのことがない限り、自分しか使いません。
その為「自分がノマドで作業を考えた時、何を重視するのか?」が、大変重要です。
私のノマドでの作業を考えた際、
- それほど重くなく、気軽に持ち運べる。
- 落として壊したとしても、損害が少ない。
- カフェや喫茶店の一人席に置いても、大幅にスペースを取らない。
- 充電ケーブルを持ち歩かなくても良い半日作業が多い。
- 書くこと、取材先のメモをする、サイトコンテンツのアイディア出しに使う。
- 外では画像加工やイラスト作成は行なわなくても何とかなる。
……という感じだったので、満足度はそこそこ高いです。
Chromebook&ノマドで足りない分を、デスクトップパソコン&事務所or自宅での作業で補っている部分があることも、大きな理由だと思います。
一方で「外でもイラストや画像作成をしたい」「全ての作業を1台のパソコンで完結させたい」「パソコン内に大量のデータを保存しておきたい」という人にとっては、Chromebookは力不足。
正直、Chromebookは利用目的によって向き不向きが大きく分かれるので「自分は何をしたいのか?」を見極めてから、探し始めると「ノマドに最適なパソコン」が見付かりやすいと思います。
(書いた人:昼時かをる)
「ノマドワーカー、はじめました。」では、ノマドワークで働く際に役立つ情報を紹介します。
まだまだ手探り状態なノマドワークな日々ですが、似たような環境で働く方のヒントになれるよう頑張ります。