台湾は日清戦争後の約50年間、日本の統治下にあったことや、近年はドラマ、映画、小説、音楽、ファッション、アニメ、マンガなどの人気が高いこともあり、実際に台湾を訪れてみると「台湾にいるはずなのに、日本文化を感じる」ことが多々あります。
今回は「日本文化の影響を強く感じられる台湾」について焦点を当ててみたいと思います。
駅の様子が全く変わらない
高雄駅の月台(プラットフォーム)
改札口と自動改札機
高雄から嘉義へ行く為に台鉄(台湾の国鉄)を利用した際、JRと全く変わらない雰囲気に驚きました。
「これ、京都市地下鉄の自動改札機と同じやつじゃん」とつい呟く程、形そのままな自動改札機は、日本の私鉄でも良く使われているオムロン(京都府京都市)製が導入されています。
切符や車両、車内の雰囲気は異なりますが、駅構内の作りやプラットフォームは日本とほとんど変わらず、何とも言えない「懐かしさ」すら感じます。
元々、台湾内の鉄道は日本統治時代に多くの路線が建設されており、日本人建築家がデザインした古い駅舎が残っている駅もあります。道路は左運転ですが、鉄道に関しては「右運転」なのは、興味深い所です。
ちなみに日本統治時代(1940年)に建てられた旧高雄駅は「高雄願景館」という資料館になっています。
切符。無座(No seat)とは指定席なしの立ち席のこと。
自強号(=特急車両)の車内。日本の観光バスと同じく、独立シートで足置き場がある。
書店には日本の書籍やマンガがずらり
私は書店があればとりあえず入ってしまうような「本・書店好き」です。
台湾でも同じく何軒かの書店・古本屋に行きましたが「全書籍の1/3~1/4は日本製じゃないの?」と思うくらい、日本の書籍が翻訳されたものが多く置かれていました。
特にライトノベルやマンガは顕著で、日本の書店とそう変わらないレベルの商品展開がされていました。
さすがに全ての作品が翻訳されている訳ではありませんが、日本で人気のある作品であれば大抵は手に入りそうな感じです。
嘉義市にある書店の1コーナー
基本的に日本語のタイトルをそのまま台湾語(繁字体)に翻訳しているので、背表紙を見ただけでも「あぁこのマンガか」と分かるのではないでしょうか。
- 『素人打撃王』→『ポンチョ』(立沢克美)
- 『小小初音未來』→『ちびミクさん』(みなみ)
- 『鬼灯的冷徹』→『鬼灯の冷徹』(江口夏実)
- 『聖☆哥傳』→『聖☆おにいさん』(中村光)
- 『金田一少年之事件簿』(天樹征丸/佐藤文也)→『金田一の事件簿』(天樹征丸/さとうふみや)
- 『魔法少女★鈴音』→『魔法少女すずね☆マギカ』(GAN)
- 『山田君与7人魔女』→『山田くんと7人の魔女』(吉河美希)
「の」の翻訳に関しては「的」や「之」というように、表記揺れがありますね。
新刊がハイペースで出るような週刊連載作品(例:鬼灯の冷徹)は、日本とは1~2巻のタイムラグは出ていますが、それでもファンブックまできちんと翻訳されているあたり「愛」を感じます。
「東立漫畫」とは、台湾の出版社「東立出版社」の漫画本のこと。
日本の漫画作品を翻訳出版している企業で、集英社、講談社、少年画報のマンガやMF文庫J、HJ文庫、電撃文庫のライトノベルを数多く出版しています。
台南市の古本屋にて洋裁コーナー。背表紙は日本語でも中身は全て台湾語
日本の書籍が多過ぎて、逆に「台湾の書籍を購入しよう」という時に困るレベル。
今回の台湾旅行は「台湾料理の本を買う」が目的の一つだったので、料理本のコーナーを良く見ましたが、本当に台湾語に翻訳された日本の料理本は多かったです。日本でも大流行した「ジャーサラダ」の関連本は何冊も平積みで置かれていました。
【おまけ】
有名ライトノベル「とあるシリーズ」をもじった看板を下げるエアープランツ(=空氣鳳梨)屋さん
鳳梨とは「パイナップル」のことですが、エアープランツと呼ばれる植物はパイナップルの仲間なので、そう呼ばれるみたいです。
オタクな日本人(私)と台湾人(友人)はすぐに元ネタが分かりましたが、非オタクな台湾人(もう一人の友人)は「何それ?」と不思議がっており、オタクと一般人の違いを台湾でも味わいました。
有名建築物もコスプレ撮影地に
日本よりも参加人数や規模は小さいですが、台湾にもコスプレ文化はあり、各地でイベントや撮影会が行なわれています。
「週末になると、コスプレ撮影に良く使われている」と教えてくれたのが、台南市にある庭園「呉園」。
台湾四大名園の一つで、中国(閩南)式回廊、十八卯茶屋、旧台南公会堂があり、中(清朝?)、和(日本)、洋(古代ギリシア建築風)の建築物が一ヶ所に集まっています。
中国式回廊
十八卯茶屋(柳屋)。日本統治時代の食堂が元
旧台南公会堂
日本人と台湾人で「東方Projectのコスプレとかの撮影に良いよね」「確かに」という会話が成立するのはどうかと思いますが、コスプレイヤーにとっては本当に格好の撮影スポットだなと思います。
訪れたのは夜だったので、さすがにコスプレイヤーはいませんでした。もちろんコスプレだけではなく、ウェディングアルバム用の撮影場所としても良く利用されています。
コンビニで日本と同じ商品が買える
台湾のコンビニは「セブン-イレブン」と「ファミリーマート(全家便利商店)」が2強。すっかり写真を撮り忘れたほど、駅や町中の至る所にあります。
セブン-イレブンはアメリカ発祥のコンビニエンスストアですが、本家アメリカのセブン-イレブンは経営悪化により1993年に日本のイトーヨーカ堂に買収。世界各国にあるセブン-イレブンは日本式の営業・販売形態を取っています。
台湾でも「日本とほとんど変わらない」と思うほど、同じような商品展開をしています。
ただしドリップ式コーヒーの販売やカフェスペースの設置に関しては、台湾の方が早かったように思います。
2015年3月末現在、台湾のセブン-イレブンは5,045店舗。日本の総店舗数は17,636店舗。九州には1,920店舗あります。
台湾は九州と同じくらいの面積なことを考えると、セブン-イレブンが台湾各地の至る所にあるのが分かります。
台湾有数の観光地「九份」にも普通にあります。
ちなみに台湾のファミリーマートの店舗数は2,957店舗(2015年4月末現在)なので、セブン-イレブンよりも見かける割合は少ないと思います。実際に今回の旅行では、高雄国際空港と駅構内くらいしか見かけませんでした。
滞在中はセブン-イレブンに良く行きましたが、前回と前々回(約2年前、5年前)よりも日本と同様にPB商品が数多く並ぶようになり、いわゆる「台湾の地元企業のお菓子」が非常に少なくなったように感じました。
台湾のセブン-イレブンを運営しているのは「統一企業」という会社で、スターバックスやミスタードーナツ、ヤマト宅急便のフランチャイズ事業も行なっています。
その為「セブン-イレブンでミスタードーナツのドーナツが買える」という前評判を聞いていたので、行く先々のセブン-イレブンで探したのですが、残念ながら見つけられませんでした。日本のセブンカフェドーナツと同様に、まだ全ての店舗では導入されていないのかもしれません。
日本のセブン-イレブンのお菓子コーナー。ただし台湾も品揃えが全く変わらない。
以前「台湾でブラックサンダーが大ブーム」というニュースを聞いていたので「お土産には、ブラックサンダーが良いのでは?」と思ったのですが、実際にはどこのコンビニでも普通に売られていました。
台湾は5月で平均気温が26~30度になるので、ブラックサンダーなどチョコ系は普通に溶けてやわらかくなります。持ち運びには注意です。
日本のスーパーやコンビニで買えるお菓子(PB含む)であれば、台湾でも大抵は購入できるので、お土産には全く不向きなことを実感しました。
お土産選びに困ったら「地方限定」や「有名洋菓子、和菓子店の人気商品」など、日本でもお土産として良く利用されているものを選ぶと外れなしだと思います。
黒輪(おれん)が美味しい
日本発祥のおでんは、日本統治時代に台湾に広がった食文化の一つ。
コンビニでもセブン-イレブンは「關東煮」、ファミリーマートは「黒輪」という名前で売り出しています。
具は練り物が中心で、他にも木綿豆腐や昆布、豚の腸など。
味や出汁の感じは日本のおでんとほぼ同じ。使っている香辛料の差か練り物の味がちょっと変わっていたり、専用のタレ(味の形容が難しい)を付けて食べたりするのが、台湾っぽい感じです。
いかがでしたか?
台湾における日本文化は「日本人が思った以上に浸透している」ように感じました。
約5年前に台湾を訪れた際は、ちょうど韓流ブームの時期だったのもあり、至る所で「韓流押し」の雰囲気がありましたが、今回はそれほど印象に残りませんでした。
台湾は日本の農林水産物・食品の輸出先として、香港とアメリカに次ぐ第3位ですが、5月に台湾政府は「福島県など5県産の食品の産地偽装」などを理由に、日本産食品の輸入に関する規制を強化する方針を示しています。
この件が今後台日関係や台湾の食文化にどのような影響をもたらすのか、引き続き注目していきたいです。
(書いた人:昼時かをる)
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