滋賀県の「人気観光スポット」「デートスポット」「子どもの遊び場」……どれを見てもあまりランキング上位に挙がらないのですが、個人的におすすめしたいのが滋賀県立琵琶湖博物館。
名前の通り琵琶湖博物館は「琵琶湖と人」をテーマに、琵琶湖の今昔や生き物、人との関わりについて学べる「体験型」の博物館です。
上記の説明や「県立の博物館」だけ見てしまうと、退屈でお堅くて古いイメージがありますが、実際に行ってみれば民族館、水族館、自然科学館を足して三で割ったような所で「あれ?思った以上に面白い」という感想が出ると思います。
実際にあまり期待をせずに行った私(学芸員資格持ち。美術館、博物館、資料館には真面目にうるさい)でも、4時間近く見て回ったのですが「もっとじっくり見るのに後1時間は欲しい!」と思うくらい充分に楽しめました。
ちょっと変わった施設に魅力を感じる人、水族館が好きな人、子どもと一緒に学んで楽しめるスポットが知りたいファミリー、学芸員志望の大学生、明るい廃墟で有名になったピエリ守山や琵琶湖一周のついでにどこかに寄ってみたい人など、それぞれが楽しめる琵琶湖博物館を紹介します。
琵琶湖博物館の魅力
「琵琶湖と人」がテーマの展示
滋賀県立琵琶湖博物館は2階建て。
A~Cの展示室と水族展示室、企画展示室の3つの展示室に分かれています。
今まで琵琶湖には「京都、大阪に住んでいる人は、琵琶湖の水を止められると困る」「日本最大の湖」「ブラックバスの生息地」というイメージしか無かったのですが、実際は古代から現代にかけて、動植物や人間にとって重要な場所なことが良く分かります。
【A展示室 琵琶湖のおいたち】
琵琶湖がどのような経緯で現在の姿になったのかを、年代を追って展示しているコーナーです。
研究・調査現場を再現したり、化石・岩石・鉱物の標本も展示したりしているので、発掘・鉱物マニアにもたまらない場所。
【B展示室 人と琵琶湖の歴史】
琵琶湖と人間との関わりを、湖底遺跡(!)や湖上交通、漁労の様子や、治水・利水の取り組みを紹介。
湖上輸送の主役を担った丸子船や、世界最大の淡水貝塚の剥ぎ取り標本が見ものです。
【C展示室 湖の環境と人びとのくらし】
「湖と人」のテーマにして、琵琶湖地域の事前と人との関わり、相互作用を展示しています。
昭和30年代の暮らしを当時の民家で体験できる「農村のくらし」は、実際の民家を移築した
淡水魚中心の水族館施設
▲ビワマス。琵琶湖に生息する固有種。
琵琶湖博物館の見どころの一つが「水族展示室:淡水の生き物たち」。
当館の専門分野が「琵琶湖」「淡水魚」なこともあり、水族展示室にいるのは淡水魚が中心です。
水族館は海水魚中心で華やかな展示が多いので「淡水魚中心だと、地味で面白く無いのでは?」と失礼な感想を持ってしまうのですが、実際に見てみると京都水族館や海遊館とは、また全然違う魅力を体験できます。
琵琶湖固有種や、レッドデータブックにも記載されている日本の希少な淡水魚、世界各国の淡水魚も展示されており、種類の多さに驚きます。
チョウザメ(バイカルチョウザメ、ロシアチョウザメ)、スポッティド・カーなどが悠然と泳ぐ巨大水槽では、自分の身長と同じくらいの古代魚がビッチビチいました。
琵琶湖北部にある竹生島(ちくぶしま)周辺の水中を再現した「トンネル水槽」や魚と触れ合える「ふれあい体験室」は体験する価値あり。
※ふれあい体験室は2014年12月2日~2015年3月23日まで閉鎖しています。
またディスカバリールーム(通称:ザリガニ部屋)は子ども達大喜びの展示室で、大型のザリガニ模型に釘付けになるのは間違いなし。
琵琶湖博物館から車で約15分の距離にあるピエリ守山にも子どもたちの遊び場はありますが、やはり広さや内容の充実度としては当館の方が上。
ここは「ナマズ推し」の博物館
京都水族館は「オオサンショウウオ」、海遊館は「ジンベエザメ」など、各施設によって推しマスコットキャラクターが居たりするのですが、琵琶湖博物館は「ナマズ」推し。
「琵琶湖の主」とも言われる日本最大級の淡水魚「ビワコオオナマズ」は名前の通り、琵琶湖淀川水系にしか生息しない固有種です。
他の淡水魚に目を奪われて写真を撮り損ねましたが、かなり大きな魚でした。
おみやげコーナーに並ぶナマズグッズは「珍奇」の一言。
ブラックバス料理が食べられる館内レストラン
▲湖の幸の天丼(右:オオクチバス、左:ビワマスの天ぷら)。赤だしの味噌汁、お新香2種。
美術館や博物館内にはレストランや喫茶室がある所も多いですが、その中では琵琶湖博物館内にあるレストラン「にほのうみ」では、何とも珍しいブラックバス(オオクチバス)料理が食べられます。
私のイメージする琵琶湖の一つに「ブラックバスの生息地。釣ったブラックバスはリリース不可」というのがあったのですが、博物館でブラックバス料理を提供しているのは、何ともスゴいなと思いました。
ブラックバスはススキ系の白身魚で調理方法を工夫すれば美味しく食べられるそうで、食べてみた人の感想を見ても「普通の白身魚で美味しかった」が大半を占めていました。
実際に食べてみると、ブラックバスは「味がないのか?」と思うくらい非常に淡白な味で、臭みがあるのか、ハーブを使って香り付けがされていました。
天丼でハーブの味がするのが何とも違和感があり、万が一コンビニでブラックバス天丼を売り出しても「これ、採算がとれるのかな?」と思うような味です。
バス料理以外にも、なまず料理も食べられます。
ナマズは身がふにゅふにゅしていて、白身魚だけど脂身が多いようなジューシーさがあります。
好みは別れる所だと思いますが、正直に言うとブラックバス天丼よりも、なまず天丼の方が美味しかった……。
琵琶湖博物館のレストランでは「普段と違う変わった料理を食べてみたい」と言う人の願いを叶えてくれます。
近江牛を使った料理や一般的なメニューもあるので、子どもから大人まで誰でも美味しく利用できるレストランになっています。
営業時間:10時30分~17時(食事は11時~16時)。
バリアフリー設備。席数80席。
【オリジナルバス料理】
湖の幸の天丼(オオクチバスとビワマスの天ぷら)880円
湖の幸の天ぷらうどん(バスとビワマスの天ぷら)900円
湖の幸の天ぷらそば(バスと琵琶鱒の天ぷら)900円
近江御膳(バス天ぷら付)1,530円
利用案内
【開館時間】
午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
博物館や美術館は早くに閉館するイメージがありますが、特に琵琶湖博物館は早いです。
琵琶湖周辺で色々と見て回る予定の人は時間に注意して下さい。
【休館日】
毎週月曜日(月曜が休日の場合は開館)、年末年始、その他臨時休館有り。
ゴールデンウィーク期間中は開館しています。
【観覧料】
年間パスポートは大人3,000円、高校生・大学生は1,600円。
その他観覧料の減免、無料日もあります。
アクセス
琵琶湖博物館は琵琶湖の湖畔、烏丸半島(からすまはんとう)という、結構不便な所にあります。
一応、公共交通機関を使っても行けますが、お金や時間が思ったよりも掛かるかもしれません。
私が普段、美術館や博物館に行くときは電車やバスの公共交通機関を利用するのですが、琵琶湖博物館に関しては、自動車やバイクで行った方が楽で便利です。
「琵琶湖を一周するついでに寄る」くらいの感覚で行くのがおすすめかと。
「明るい廃墟」で一躍有名になったピエリ守山の南側に位置します。
公共交通機関
【JRとバスを利用】
1.JR琵琶湖線「草津駅」下車。
2.草津駅「西口」2番バス乗り場から、近江鉄道バスのからすま半島行き(約25分)に乗り、「琵琶湖博物館前」を下車。
3.徒歩2分。
草津駅は新快速と普通、特急「ひだ」「はるか」「びわこエクスプレス」が止まります。
近江鉄道バスの草津駅西口~琵琶湖博物館の運賃は大人430円、子ども220円。
行きも帰りも1時間1~2本の超ローカルなバスなので注意。路線図や時刻表は近江鉄道バスのWebサイトを参照して下さい。
【タクシー】
JR草津駅西口、JR守山駅西口、JR湖西線堅田駅から、それぞれ約20分。
JR栗東駅西口から約15分。
【琵琶湖汽船】
大津港(京阪浜大津駅下車 徒歩3分)から約45分。
定期便は無いので「京阪浜大津駅から船で琵琶湖を渡って琵琶湖博物館へ行く」という方法は非常に難しいです。
車、バイク
琵琶湖博物館は駐車場が完備しており、普通車480台、観光バス40台が停められます。
普通車や自動二輪・原付で来館した博物館利用者の駐車料金は無料です。
【駐車料金】
- 大型車:1700円
- マイクロバス:1100円
- 普通車:550円、自動二輪・原付:200円
2016年にリニューアルオープン予定!
実は琵琶湖博物館は、2016年10月に開館20周年を迎えるのに合わせて、同年7月にリニューアルオープンする予定です。
2015年秋から2016年7月にかけて最初のリニューアルが行なわれて、展示室Cや生物展示コーナーを改装。
メインは生物展示コーナーで、琵琶湖のプランクトンがスクリーン上で観察できる「マイクロアクアリウム」、琵琶湖に唯一生息する「ビワマス」などがいる湖の底の様子を再現した水槽が設置しれます。また展示室Cは写真や複製などを使って、年代ごとの琵琶湖の様子が分かりやすく紹介。
琵琶湖博物館の全体を見ても「90年代に作った当初の古い展示で止まっているなぁ」という印象は無かったのですが、色々とリニューアルされるようです。
(参照:より楽しく湖と人間の関わり学べる施設に 琵琶湖博物館リニューアル案 - 産経ニュース)
2020年にリニューアル完了予定なので、数年後には今とはまた違った琵琶湖博物館になっていると思います。
リニューアル前の琵琶湖博物館を楽しみたい人は、今年の秋までに訪れてみて下さい。
交通の便は本当にイマイチですが、子どもも大人も思った以上に楽しめる、一度は行ってみて損はない博物館だと思います。
(書いた人:昼時かをる)
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